このレビューはネタバレを含みます
『生きたい』『逃げたい』なんて口が裂けても言えなかった大戦中の日本で、人の上に立つことの難しさを描いた作品のように感じました。
日本軍が制圧し、敵の兵士を捕虜として使うジャワ島を舞台に、『生きるために今は辛抱だ』と軍門に降る相手の兵士と、『敵に捕まるくらいなら自決する』ということを身体に染み込ませられた日本の兵士。
毅然とした態度で統治下を治めていたヨノイ大尉も、戦況が悪化していくのを知ってのことなのか、次第に痺れを切らして理不尽な命令をするように。
責任の所在を求め、『元凶を断つべし』と見せしめの為の無意味な殺生や連帯責任の処罰を行うことを良しとする風潮の中で、外からやってきた英国兵士・セリアズはことごとくヨノイの前に立ち塞がる。
『本当にお前のしている行為は正しいのか?』
と問いかけるように。
生き埋めにされたセリアズの髪の毛を切り取り立ち去る行為の中には、ヨノイなりのリスペクト、そして日本が掲げていた軍国像への迷いが含まれているんだと思います。おそらく。
このヨノイとセリアズの2人を通して描かれるリーダー像の対比と並んで肝になってくるのが、ロレンスとハラ軍曹の関係性。
あれだけ威勢を張っていたハラ軍曹が終戦後に英語を覚え、死を悟りつつも終始笑みを浮かべながら話すシーンは、負けた国として下につくことが人間をも変えてしまうってことなのか…と感じてしまいました。
劇中でも話していた『戦争を憎んでも、人を憎まない』という信念がありながら、戦争という時代に出会ってしまったがためにそう振舞わざるを得なかったロレンスとハラ、そしてセリアズとヨノイ。
すごく考えさせられる映画だと思います。