KOZO

ボストン市庁舎のKOZOのレビュー・感想・評価

ボストン市庁舎(2020年製作の映画)
4.2
アメリカの中でも多くの人種が居住する大都市・ボストンの市庁舎で働く公務員たちの様々な働く姿を紹介していくドキュメンタリー、274分。途中休憩あり。
ナレーションや解説もなく淡々と彼らの姿を紹介していく。
正直なところ観賞後にまず浮かんだのは「長かった…」。ところどころ睡魔が。
でも観終わってからじわじわといろいろな思いが浮かんできた。

中でもアイルランド系移民出身の市長があちこちの行事に出向き市民との対話を重ねていく中で、確固たる信念のもと、貧困対策の必要性や多様性が大事だと訴える姿。弱者への優しいまなざし。人種差別と闘う姿勢。
対話をする市民側の黒人、ヒスパニック、アジア系の人たちも生き生きとしている。
トランプ政権時に制作された作品として、トランプが招いた「分断」を批判、「分断がある街は発展しない」(だったかな?)というメッセージは心に響いた。
その市長はバイデン政権で労働長官に就任、必ずしも民主党政権がバラ色とは言わないけれど、分断で生じた憎しみが解消されていくことに期待したい。

我が大阪の話をすると、わかりやすい敵を「既得権益」として攻撃する某政党の戦略では公務員も既得権益とされ、給料の削減や非正規雇用、派遣の人たちが多くを占めるようになった役所の姿。上司である市長や知事に批判されて公務員としての「誇り」も失われていったのではないか。

2度の“大阪都構想”の住民投票が招いた分断、「改革」の名のもとに人員や病院を削減したことで招いたコロナ対策の失敗で疲弊してるはずなのに、大阪府民は今回の選挙でその政党を選んだ。
もっとも、その政党の言う「既得権益」である旧来の政党の不甲斐なさをついた戦略はさすがとは思う。
やたら夕方の民放テレビのニュースショーに出て自己アピールに励む知事の姿を思い出しながら。

振り返って、この作品のキャッチコピーにある「市民のための市役所」というボストンの有り様にいろいろと考えさせられる。
KOZO

KOZO