なつかし二番館

茲山魚譜 チャサンオボのなつかし二番館のレビュー・感想・評価

茲山魚譜 チャサンオボ(2019年製作の映画)
4.0
WOWOWオンデマンドでピョン・ヨハンで検索したら,配信期限が迫っている。で,説明を見ると,チョン・ヤギョンのお兄さんの話じゃないか。危うく見逃すところだったが,最近配信される作品が減っている中,韓国映画で唯一,これはパス,としていた理由は「茲山魚譜」という古くさい読めない漢字の題名と,モノクロの時代劇ぽいパッケージゆえ。テーマが漢字や朱子学の理屈より実学ということなのに,これはいただけない。

真ん中の兄はキリスト教信仰を貫いて処刑されたのは知っていたが,一番上の兄(主人公のチョン・ヤクチョン)は,最初背教者として描かれる。
劇中の解釈に従うと,しかし,実は,チョン・ヤギョンが言わば「神のものは神に,カエサルのものはカエサルに」的な妥協だったのに対し,上の兄チョン・ヤクチョンは,中国でキリスト教が受け入れられた当初主流だった「儒教の天,すなわち,キリスト教の神」的な解釈で,実情を考えずに東洋に祖先祭祀禁令を出す教皇についていけなかっただけ。彼の関心は最初から西洋の学問にあった。
流罪に処せられて,彼の好奇心は海洋生物に向かう。博物学的研究書を出すが,政治は論じない。朝鮮の民は飢えているのに貴族はそこから搾取・収奪することしか頭にない。弟のような妥協などできるはずはない。それを正面から取り上げれば一族皆殺しになるから沈黙して,実学に貢献しようとした。
その助けになったのが,島の青年チャンデ(ピョン・ヨハンの役)の存在だった。他のレビューにあるとおり,彼にもまた別の人生模様があった。

ピョン・ヨハン自身,キリスト者の子供に生まれ,子供のころはその名前がいやだったという。韓国人でも親がせっかく付けてくれた聖人の名前を,ありふれた漢字音読みの名前に改名してしまう人もいるのだが,最初の名前のまま芸能人としても活動しているピョン・ヨハンにふさわしい映画だなという感じがした。