おそばマニア

岸和田少年愚連隊のおそばマニアのレビュー・感想・評価

岸和田少年愚連隊(1996年製作の映画)
3.5
いちばんよかったのは、帰ってきた矢部が玄関ではなく、掃き出しから家にあがり、「ただいま」とも言わず居間の父と会話をはじめるシーン。カットを割らずに済むしカメラもすこし離れた位置で低く固定したままだから純粋に日常芝居を眺めていられるし、これまでこの家族がこうして生活してきたのだということがよく伝わる。そこそこ大事なシーンなりの省略の工夫を感じた。
ただ、通して観るとかなりムラがある印象で、終盤のベタな青春もののノリはちょっと唐突だし、何度ボコボコにされてもすぐに回復して無かったことになるため緊張感も生まれてこなかったりと、ところどころ置いていかれる。
その一方で、個別のシーンは川や橋や歩道橋やお好み焼き屋等、どれも岸和田という街を(名所巡り、あるいは最近アニメでよくあるタイアップでのロケ地巡礼を狙ったしらじらしい撮り方をすることなく)すごくうまく利用していて感心した。個別具体的な、映るべきものだけが映っているから、どの人物がどの場所にいても必然性を感じる。
あと、下品な台詞はあっても、青春ものにありがちな無用なお色気シーンがないのもよかった。キャストも台詞もよかった。

おおむねよかった。