ハレルヤ

異邦人 デジタル復元版のハレルヤのレビュー・感想・評価

異邦人 デジタル復元版(1967年製作の映画)
3.8
第二次世界大戦前のアルジェ。母親を亡くしたばかりの主人公ムルソー。特に虚しさもなく翌日から友人や恋人とひと時を過ごすも、その最中トラブルに巻き込まれてその際に相手を殺害してしまう。そして裁判にかけられる様子を描いたサスペンスドラマ。

イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニ主演作。「8 1/2」「ひまわり」などで名演を見せてくれた彼の演技力の高さは本作でも発揮。空虚で無機質な日々を過ごし、母の死を受けても涙を流さず、恋人のマリーから求婚されても心はそれほど動かない。殺人を犯してもそこまで動揺がない。

そんなムルソーの姿を見事に体現。終盤での牧師との対面の場面での鬼気迫る表情、ラストシーンでの涙は深く印象に残りました。

画面越しに伝わってくるアルジェの暑苦しさ。波打ち際の美しさも際立っていますし、マリー役のアンナ・カリーナの美人な姿も本作の魅力。

まるで茶番のような裁判もこの映画の肝。状況だけで一方的にムルソーを最悪な人間扱い。それまではごく普通に日常を送ってたはずの人間がここまで晒し者にされて、醜悪な仕打ちを受ける現実を見せつけられました。

目立たない作品ですが、映画好きの琴線を刺激するような内容だと思います。
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