特売小説

ラン・ハイド・ファイトの特売小説のレビュー・感想・評価

ラン・ハイド・ファイト(2020年製作の映画)
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誰とも置き換え可能な役を演じるバーバラ・クランプトンの特にこれという見せ場もない扱いはさて措いて。

母親の不在が父娘関係にもたらす影響がとても丁寧に、そして娘個人に対しては的確な映画的手法を用いた形で描かれるじゃないですか。

その手法自体は特に目新しいものではないものの、しかし、物語の前段を省略した上で開始早々の状況展開を可能にしている訳ですよね。

詰まりその工夫が、例えば回想シーンなどで映画の進行を止めるような野暮もせず、同時に主人公の人物像を深堀りするに奏功している訳ですよ。

これじゃん、この工夫に密かにほくそ笑む事こそがジャンル映画を観る醍醐味じゃん、その一方で主人公に無双させない品行方正な構えがまた常に画面に緊張感をもたらしてあって飽きさせない辺り、実に賢明すよね。

完璧すよね。

或いは本作のような工夫もせず愚鈍ながら情熱だけは迸っているような不器用さを愛でるも、または御座なりにお約束を再現して体裁を繕いながら聞いちゃあいない自分語りやあまつさえ説教などを始めようものなら死ね死ね死ね、お前なんか、死ね死ね死ね死ね死んじまえこの門外漢が、と追い払うのがジャンル映画の楽しみではあるのだがそれはまた別のお話。

いよいよ母を見送る場面などはこれ主人公の感情から物語上の意味合いからカメラワークから、いずれ非常に味わい深い名場面でしたわよね。

これだから映画をやめられねえんだ畜生め、と。
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