ノラネコの呑んで観るシネマ

クライ・マッチョのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.6
これはもの凄くヘンテコな映画だ。
イーストウッド演じる老いぼれた元ロデオのスターが、メキシコから恩人の息子を誘拐して来る。
だが逃避行のはずが、緊迫感はゼロ。
なぜか途中の村に落ち着いちゃって、馬の調教したり、獣医の真似事したり、老いらくのロマンスまで。
一応、最後の最後でタイトルの“マッチョ”の意味は語られるのだが、基本的にゆるーいロードムービーで、観てて「これ何の映画だっけ?」と分からなくなってくる。
たぶんイーストウッドは、もう何か伝えることがあると言うよりも、自分のために作品作ってるのではないか。
本作を端的に言えば、男らしさでブイブイ言わせてた主人公が、気がついたら老いて周りに誰もいなくなって、人生の最後に理想郷を見つける話し。
これはもう作者の願望としか思えない。
時代設定が79年なのも、原作がそうと言うより、この時代が人生で一番良かったんだろうなと。
ゼロ年代に入ってからのイーストウッド映画は、極めて端正な輪郭とバランスを持つ、次世代への遺言の様な作品が並んでいた。
しかし10年代後半からは、既存の映画文法をあえて崩す様なスタイルが目立ち、ここに来て超パーソナルなところに着地したかという印象。
ぶっちゃけ、作品としての出来は良いとは言えないが、91歳の老巨匠がたどり着いた理想の世界はここかあ、という妙な納得感はある。
その意味で実にイーストウッド的。
ブログ記事:
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