れおん

クライ・マッチョのれおんのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.7
友人の借りを返すため、彼の息子の"救出"を決意する落ちぶれた元ロデオスターのマイク・マイロ。彼の息子、ラフォは親の愛を知らずして育ち、メキシコで非行少年として暮らさざるを得ない状況にあった。男としての本当の強さとは、"マッチョ"を貫く男とそれに憧れる少年の出会いの物語。

1930年生まれのクリント・イーストウッド監督。多くの人生を描いてきた巨匠が、さらに「本物の男」の姿を描こうとした作品。また、今作でも主演を自ら果たし、彼が発する言葉の一つ一つは、やはり深く考えさせられるような言葉ばかりだった。監督として、俳優として、生きてきた人生観を映画を通して、観客に提供する。

ただ、この作品には物足りなさがあった。『アメリカン・スナイパー』という衝撃的な彼の作品の印象が強く、同様の展開を期待してしまった自分がいた。思うに、ここ数年で彼自身、何らかの心境の変化があったのだろう。『15時17分』、『運び屋』、『リチャード・ジュエル』… 彼の初期の作品もいつか見返してみたい。

なお賛否はあると思うが、今作は104分という時間、その使い方が非常に上手いように感じる。真に描きたいところは時間を多く割き濃密に描く一方、作品の重要なナラティブでも描きたいところでなければあっさりと描いてしまう。見方によれば"RPG的"とも捉えられるが、それでもすべてを丁寧に描いた結果、3時間近くなる映画よりかは大いに良かろう。もっとも、観客の想像力を借りるために、必要な描写を綿密に加えているため、そこまで気にならなかった印象にある。

歳を重ねれば重ねるほど、人生に対して様々な捉え方ができるようになるのだろうか。クリント・イーストウッドのような深い人間になりたいものだ。
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