舞台は1979年。かつてロデオのスターだった老人が知人の息子をメキシコからアメリカへ連れ戻すという仕事を受けることに、というところから始まる話。
クリント・イーストウッド監督・主演。彼の作品で言うと『グラン・トリノ』と『運び屋』あたりを掛け合わせたような内容になってる気がする。アメリカ人カウボーイとメキシコ人の若者、年も文化も違う二人の交流を、「誘拐」として始まってしまうのらりくらりなロードムービーの様相で描いていく。前述した2作品と比べるとあまり大それた展開はないものの、徐々に見えてくる、そしてメイン二人によって紡がれる温かい人間ドラマ、これに癒される。孤独な生い立ちの若者のために「自分に何ができるだろう」というようなことを次第に考え始める老人の姿はとくに印象的で、更にここに老人の格言のようなものが見えてくるのもおもしろい。未来ある若者のために厳しく、また時に口悪くも優しい姿を見せる主人公マイクをイーストウッド自ら演じるあたりにまたいろいろ意味合いを感じてしまう、いや感じざるを得ない、ってのは考えすぎなのかなどうかな。イーストウッドの過去作、若き頃やバリバリ全盛期の頃の作品というのも見てみたくなった次第。
にしても、人の優しさや老人に対しての敬意など、普段忘れがちなことを思い出させてくれるというか、じんわりと受け取れる作風が毎度本当に見事だなと。熟練の技、というやつなのかな。これは自分がもっと年を重ねてから見たらまた違う何かを受け取れそうな気もする。監督イーストウッド恐るべし。願わくは、まだまだ彼の新作を見れますように。