レッドキング

クライ・マッチョのレッドキングのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.8
昔は名の知れたカウボーイだったが、落馬事故で一線を退いてからは落ち目となったマイク。
ある日、元雇主から「メキシコにいる息子・ラフォを連れ戻してほしい」と依頼され、追手や警察から逃れながら、ラフォと国境を目指す旅が始まる。

最初は衝突していたマイクとラフォが次第に打ち解け合いながら、友であり、仲間であり、親子とも思わせるような関係にまでなっていく様子は、バディものでもあり、ロードムービーでもあります。
血の繋がりだけではない、新たな「家族」のかたちを見つけるきっかけを与えてくれたマリアの存在もとても大きい。

「老いとともに、無知な自分を知る。気づいた時には手遅れなんだ」という台詞がとても印象に残っています。
ついつい肩書きや自分が成し遂げてきたことをいつまでも誇示してしまいがちですが、
きっとそれは「何者でもない自分」が露呈する恐怖の裏返しでもあると思います。
男性は特に「男たる者…」と言われることも多いでしょうから、何者でもない「普通コンプレックス」が露呈することを恐れ、マッチョの鎧で塗り固めてしまう。
そんなことをし続けても、死んで棺桶に入る時にそんなことが無意味であると気づく、とマイクは説く。
「無知の知」じゃないけど、マッチョの鎧を脱ぎ捨て、何者でもない自分であることを認める。
その時初めて男は「マッチョ」に一歩近づくんじゃないかな、と思いました。
自分が今後歳を重ねて、「今の自分は天狗になっていないだろうか?」と自戒する意味でも、何度か見返したい作品。
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