マインド亀

ウォンカとチョコレート工場のはじまりのマインド亀のレビュー・感想・評価

4.0
ジョニー・デップ版じゃなくてジーン・ワイルダー版の前日譚らしいので注意

●『チャーリーとチョコレート工場』のウォンカの誕生の物語、という宣伝文句はあるものの、実質的には71年のジーン・ワイルダーがウォンカ役をやった『夢のチョコレート工場』の姉妹作品らしいです。なのでジョニデのティム・バートン版とは平行世界ということで、ウンパ・ルンパの曲などのオリジナル出典はこの71年版から。もし予習するなら『夢のチョコレート工場』を見たほうがいいかもしれません。

●しかしながら前日譚である本作を観てみると、このシャラメ演じるウォンカはシリーズ中一番真っ当で、思いやりのある、人とのつながりを大切にする人間ということがわかります。
本作はここまで温かい話なのに、この後、何があってそこまで人嫌いの変人になったんだお前は、というくらい人の変わりようが激しく、後日譚がめちゃくちゃ気になりました。まあ、『夢のチョコレート工場』でも、「スラグワーズにスパイされ続けた」とか言われてたから、人間不信になっちゃったんかなー、とも思いましたが、本作のウォンカは別次元の人間と思ってもいいかもしれません。

●監督は『パディントン』のポール・キングだからこそ間違いない、クセ強キャラはっちゃけぶりが笑えるハートウォーミングなミュージカルムービー。ウォンカの3作品の中では一番一番ほっこりするファミリーミュージカルでした。
なんせ音楽面は本作が一番良いです。71年版は全然エモーショナルじゃないところでミュージカルが始まるのですが、本作はきちんと盛り上げて泣かせてくれるんですよね。

●オリビア・コールマンやヒュー・グラント(『パディントン2』では悪役!)など、往年の名俳優がとってもアクの強いキャラクターを演じ、サリー・ホーキンスもウォンカの母親役として重要な役割を果たしています。あと、若い人にはあまりわからないと思いますが、Mr.ビーンのローワン・アトキンソン。彼も、昔と変わらず楽しい役割で出ているのですっごく嬉しかったのですが、もっともっとMr.ビーン味がほしい!と思ったのは私だけでしょうか。

●チョコレート組合に目をつけられたウォンカが、オリビア・コールマンの下宿に囚われた5人の仲間と協力し合う姿は、将来的に人との関係を絶ったウォンカのことを考えると、とても貴重でもあります。どうやって自分のチョコレートを広めて行くかというのはこの話の重要なロジックだと思うのですが、その方法は、なんだかヤクの密売人と変わらないってのがちょっと「オイ!」と突っ込みたくなるところではございますが…
それでもオープンしたチョコレート店はめちゃくちゃワクワクしますよねー!これどこかのアミューズメントパークで再現してくれたら絶対行くのに!とか思ってしまいました。
メルヘンチックなワクワク感は、歴代ウォンカの中で一番だと思うのですが、原作者ロアルド・ダールのダークなユーモア部分に特化したジョニデ版と比較してもメルヘンな部分とダークコメディの部分のバランスが取れた一作かもしれません。

でも、一言言いたいところなんですが、映画の重要なラストシーンを宣伝トレーラーに持ってきたらだめだよね!
マインド亀

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