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暗くなるまでこの恋をのSariのレビュー・感想・評価

暗くなるまでこの恋を(1969年製作の映画)
3.5
2022/02/02 DVD

本作が制作された1969年はドヌーヴ27歳の転換期であり、ドヌーヴ初の悪女役として開花した作品。これが翌年のルイス・ブニュエル監督『哀しみのトリスターナ』(1970)へと後継されていくことになる。

この頃に、老年のアルフレッド・ヒッチコックがドヌーヴで映画制作を考えていたが、それが実現しなかった為に、ヒッチコック信奉者であるトリュフォーが代わってドヌーヴで撮り上げたのが本作。それに寄ってか、この作品はヒッチコック的なディテールに溢れた作品になっている。
主人公の男性が美女に飜弄されていく展開は『めまい』を想起させるなど、数々の古典映画のオマージュがされているようではあるが、本作でのトリュフォーの演出は正統的で、悪く言えば面白みはない。
劇伴のアントワーヌ・デュアメルの音楽は今聴くと、ありきたりなサスペンスのようで良くない。
フランスでは当たらず、日本でヒットしたのは、大スター二人、ベルモンドとドヌーヴの共演による部分は大きいのかも知れない。

『昼顔』以後、ドヌーヴの衣装を手掛けるイヴ・サンローランの数々のワードローブは本作でも美しく着こなしており、絶世の美女ドヌーヴを堪能出来る一本。ボリュームのあるブロンドヘアと、細身でミニ丈のワンピースから伸びる細い脚のバランスが美しい。
ドヌーヴがヌーヴェル・ヴァーグ左岸派ジャック・ドゥミから、右岸派トリュフォーに移行したのもまた興味深い所である。(ドヌーヴとトリュフォーはこの映画の撮影時に同棲していた。)


ストーリー:
フランスの植民島で煙草工場を営むルイ(ジャン=ポール・ベルモンド)は写真で見合いをする。しかし彼の前に現れた女性は、写真とは別人の美貌の持ち主だった。友人の写真を送ったという彼女の言葉を信じたルイは、その女性ユリー(ドヌーヴ)とすぐに結婚する。ユリーに夢中になったルイは、彼女が自分の預金を自由に使えるように計らった。しかしユリーは、ルイの預金の大部分を引き出して失踪してしまう。そこへユリーの姉ベルトがやって来て、彼女の写真を見るなり妹ではないと証言する。
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