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黄龍の村の都部のレビュー・感想・評価

黄龍の村(2021年製作の映画)
3.0
ネタバレ厳禁という謳い文句がされていた本作ですが、監督の作風や傾向を知っている人ならば”それ”は読めなくはない展開で、個人的な所感としては『いつもの』よりは更なる変わり種を期待していたのでその点は残念ではあります。

しかしながら66分という上映尺を消化するジャンルMIXの転換がもたらす面白さとその意外性を引っ張り過ぎないスピーディな事態の進展は、王道の村ホラーの潮流を汲みつつ現代的なエンタメとしてこの規模の中編映画に仕上げる感性の若さには感心させられます。
事実として監督は新鋭なのですが、この場合フットワークの軽さが凄いですね。

本作は前半/後半と、一つの作品の中にジャンル二部作が仕込まれている構成なのですが、しかし完成度という点では前半の方に軍配が上がるような気がします。
阪元監督の作品の妙として『軽佻浮薄な若者の質感』があり、この見るに堪えないという気持ちを引っ張ってくる言動に対する克明な筆致は作品の毒気として強く機能していて唯一性がある。
そういう人間が現実に多く存在するかはさておき、偏見に近しいパブリックイメージとしてある嫌な若者像の解像度の高さが冒頭から流し込まれる不快感は実に最高でした。

翻って作品としての弱点のように感じるのもその軽佻浮薄さで、後半の展開の主役である彼等の態度が形こそ違えど似通った物なのは明確に上滑りしており、他作品では特殊な職種を営む人間という非現実感が補っている部分が今回は垂れ流しなので、単に中身のなさが透けて見える人物像になっているのはやはり問題かと。

彼等の酷薄な背景を縷縷と語る事に面白味はないので切り捨ては正解だと思いますが、設定に対する舞台装置としての使い潰しが目立つ作りなのは、作品を構成する要素が等しく安っぽいという印象を覚える大きな要因となっていて、映画としては『物語の転調』のみが純然たる面白さになってるのは不満でした。
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