一人旅

映画検閲の一人旅のレビュー・感想・評価

映画検閲(2021年製作の映画)
3.0
プラノ・ベイリー=ボンド監督作。

ウェールズ出身の新鋭女性監督:プラノ・ベイリー=ボンドの長編デビュー作で、サンダンスをはじめ数多くのジャンル映画祭で賞賛されたサイコホラーです。

1980年代、サッチャー政権下のイギリスを舞台に、暴力的&猥褻な内容を売り物にしたB級映画群=“ビデオ・ナスティ”の検閲官を務めているヒロイン:イーニッドが、とある映画の事前検閲を行っていたところ、その映像に映っていた若い女性が、幼い日に忽然と姿を消したまま行方不明となっている実の妹に瓜二つであることに気づき、真相を確かめるべく独自に調査を進めていく中で現実と虚構の狭間に引きずり込まれていく姿を描いたサイコホラーとなっています。

VHS全盛の1980年代において“英国社会の害悪”として非難されたB級ホラー映画に対する愛着とオマージュを捧げた気鋭のホラー作品で、発売前のVHS映画の検閲というヒロインの特殊な仕事風景に初っ端から惹き込まれますし、ヒロインを取り巻く陰鬱な現実と映画の中の虚構世界の融合が不気味な恐怖感覚を現出しています。また、街角のレンタルビデオ店やB級映画のパッケージ、VHSを再現した粗い映像、スタンダードサイズの画面アスペクト比への切り替え…といった80年代当時全盛期にあったVHSカルチャーの再現がノスタルジックな味わいを付与しています。
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