DJあおやま

14歳の栞のDJあおやまのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
4.0
『ハロー!ブランニューワールド!』(『もう無理。限界。逃げ出したい』)の竹林亮監督の長編作品。実在する中学校の「2年6組」35人全員に密着したドキュメンタリー。
何も大きな事件は起きないが、一人一人にきっちりとドラマがある。それはこの「2年6組」だけではなく、どのクラスにもきっと。あの頃、あの教室という密室で、クラスメイトが何を考えて何に悩んでいたのか、つい思いを馳せてみたくなった。
この作品は性質上、自分の14歳当時を回顧せずにはいられないのだが、もう10年以上前のことで、あまり詳しく覚えていない。おそらく、これからどんどんその記憶は薄れていくのだろうが、あの時感じたことや刺激を受けたものは、無意識のうちに自分という人間を形作っていると自信を持って言える。それくらい大切な期間だと思う。僕は当時、部活には所属せず、家に帰れば映画やネットサーフィン三昧という日々を送っていた。友達はいたがクラスの中心でなく、ちょっと勉強ができるヤツくらいの立ち位置だったと思う。今思えば、そこまで楽しくなかったが、不思議と悪い日々でもなかったと思う。
そんな自分がこの作品の中にいないか、つい探してしまった。部活にひたむきに向き合ったり、周りを巻き込んで良いクラスにしようと働きかけたり、そういう子たちには縁遠さを感じた。また、そういう子たちとは対照的に、自分のことが嫌いだとしきりに口にする子や、自分のキャラを気にして本音を言えない子もいて、その中学生ならではの過剰な自意識に悩む姿に愛おしさを感じた。いわゆる陽キャや陰キャ、そのどんな子たちも、どこか自分の不完全さを認識していて、中には、すでに現実の厳しさや自分の限界にぶち当たっている子もいて、まだ中学生なのにどうして…と思う自分がいた。ただ、若いからなんでもできると思うのは、すでに若くない人だけだとつくづく思う。自分もまだ若い部類に入る年齢かもしれないが、もうとうに若さゆえのエネルギーは失ってしまった。いや、思い返すと、そんなエネルギーを持っていた時期はなかったかもしれない。
あるきっかけで不登校となってしまった子も、みなと一様にフォーカスされていた。当時、僕のクラスにもいた気がするが、いないのが当たり前でさして気にも留めていなかった。一体どういう理由で学校に来れなくなってしまったのだろうと今更ながら思う。この作品でも、彼が素直に感情を吐露することはない。そして、彼に罪の意識を感じる子が人伝いに手紙を渡すシーンがあって、それが妙にドラマチックだった。ただ、それをきっかけに最後に彼がみんなの前に現れるほどドラマチックではないのも現実だった。
そんな35人分の思考をまざまざと見せつけられた後、エンディングに流れるクリープハイプの『栞』のちょっと騒がしいくらいのイントロが鮮烈だった。素敵な作品でした。
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