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14歳の栞の708のネタバレレビュー・内容・結末

14歳の栞(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

埼玉県春日部のとある中学校。3学期の修了式までの50日間、2年6組の35人ひとりひとりを収めたドキュメンタリー。全員実名で変な演出や脚色はなし。生徒の家族も本物。100%ガチです。ドキュメンタリーは色々ありますが、自分的にはトップクラスです。

作品の特性上、DVD化も配信もなく、劇場でしか観られません。リヴァイヴァル上映にて観ました。いやぁ、観てよかった!

ひとりひとりがインタビューされて紹介されていくうちに、全員が主役でありながらも脇役であるという認識に切り替わりながらも、2年6組自体が主役という認識になっていきます。きっと膨大な映像の素材があったと思うんですが、見事な編集でした。

中学2年って子供から大人になっていく微妙な年頃なんだけど、その年頃ならではの甘さも苦さも酸っぱさも隠さずに詰め込まれてます。素直な子もいれば屈折した子もいるし、大胆な子もいれば繊細な子もいる、熱い子もいれば冷めた子もいる、夢見る子もいれば現実的な子もいる、大人びた子もいれば子供っぽい子もいるという感じで、いくつものアンビバレントな側面同士がぶつかり合ったり調和したりするのですが、そんなことが日々起きる教室という場は本当に凄いと思いました。まぁ、僕も中学2年のときにはその凄さに気づかなかったんですけどね。昨今耳にする「多様性」なんていう安っぽい言葉では片づけたくない感じ。人それぞれ。個性もそれぞれ。気持ちも生き方もそれぞれ。

川辺で最後の記念撮影をすることになり、登校拒否をしている子へそのきっかけをつくってしまったであろう子が手紙を渡したものの、結局川辺に姿を見せなかったという流れも、よくありがちな妙な感動シークエンスにならずに現実的でよかったです。

14歳から40年経った今の自分が観たらいろんなスイッチが押されてしまい、なんかずっとウルウルしてました。

インターネットやSNSでの誹謗中傷やプライバシーの侵害も多い今の時代、この企画を承諾した学校や生徒たちやその親御さんたちは凄いなぁと思いました。制作サイドに対する信頼があるからこそなのでしょう。入場の際に藁半紙のプリントが配られ、始まりと終わりにアテンションが入り、制作サイドが丁寧に心配りをしながらも、観る側を信頼してくれているようにも思えました。
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