特異な映像で紡がれる特異な物語
加齢による死を克服する技術を最初に経験した女性の物語
不老不死というSF的に大きなテーマを扱いながら、ストーリーは主人公・エマと彼女の周辺の人物に枠を絞って展開されるので、かなりミニマルな印象を受ける
前半目を引くプラスティネーションの場面、死体を操り人形のように動かすというなかなかおぞましい見かけなのだが、同時に一種の霊媒のような、死者の伝えんとすることを懸命に手繰る厳粛な過程のようでもあり、作品全体のテーマである生と死の繋がり・連続性を暗示するようである
映画は主人公・エマの年齢、また彼女に関わる人の移り変わりによって四つのパートに分かれていて、パート毎に映像の質感が変化していく
劇中の時間が進むと逆に映像は古いヨーロッパ映画のようなルックに遡行していき、そこに劇中の時間と現実の時間との違いを感じさせるというのが今作のSF的仕掛けと言えるだろうか
特に重要なモノクロの第三パートは、一切の無駄を省いた美しさを湛えて今作のテーマの深奥、生と死・自己と他者の円環へと観るものを誘う
深大な主題とそれを十全に語ることを可能にする映像のクオリティで、稀有な感覚を味わうことのできる映画だった