つエ

君は永遠にそいつらより若いのつエのレビュー・感想・評価

4.4
ストローを噛み潰した紙パック鬼ころしのインパクト

原作小説から登場人物やエピソードを絞り込み、主人公・ホリガイとイノギさんの関係性にフォーカスしてシンプルになってはいるが、他者といかに関わるか、他者の悩み・傷にどう向き合い応答するか、というテーマは原作と変わらず抽出された真っ当な映像化である
またアンケートや自転車など、原作にも出てくる小物の使い方に映画オリジナルのアレンジが施されていてこちらも巧い

ホリガイのポチョムキンや後輩バイト・ヤスダの童貞、ゼミ仲間・ヨッシーの後悔など、傍から見ての軽重はあれ、劇中の登場人物たちは当人にはどれも同じく深刻な悩みを持っていて、大学生らしい微温的なコミュニケーションのすぐ裏側にそうしたものを見え隠れさせながら繊細な会話劇が展開される

そして映画として観て特に感じたのは、ホリガイが人の心の象徴たる"部屋"を行き来する物語だったんだな、ということだ

人と密に関わることに苦手意識がありそれを仕事とする児童福祉司への就職に不安を抱えるホリガイが偶然知り合ったイノギさんの部屋に、イノギさんがホリガイの部屋に、そして再びホリガイがイノギさんの部屋にと往来することで関係性を深め、日常のすぐ隣に存在する理不尽な暴力に向き合うための端緒をつかんでいく
やがてその運動がホミネくんの部屋からその真下のショウゴくんの部屋、そしてラストで仕事として訪れる家の玄関へと伸びていく、というモーメントが映画全体を振り返ると見出すことができ、映像になってこそのテリングを感じた

赤髪で酒好き、ユルくてガサツではあるけれど根っこは真面目というホリガイのキャラクターを見事に再現した佐久間由依はこの人しかいない、というハマりかた
またその相手・イノギさんの奈緒もふわっとした存在感ながら思い過去を背負う役を好演、特にタイトルを回収するシーンでの受けの表情が素晴らしかった

文芸誌ぐらいのボリュームがあるパンフレットも、脚本まで収録されお値段以上の読み応えで、力が入りすぎていて良い
つエ

つエ