都部

FUNNY BUNNYの都部のレビュー・感想・評価

FUNNY BUNNY(2021年製作の映画)
3.5
鑑賞を始めて間もなく観客の大半が感じるのは、香ばしいほどの台詞回しのダサさである。無意味にサブカルネタや喩え話を交えた語りに、不自然なまでに饒舌で気取った語調、そして実在する偉人や創作の名言を恥ずかしげもなく羅列する掛け合いにとにかく歯止めない。

そんな良くも悪くも圧倒的な個人である語り部:剣持聡を中心とした痛烈な作風が興味関心を引くのはしかしあるだろう。

本作は監督の戯曲を原作としていて、物語前半の図書館での一連シークエンスは舞台劇のような演技傾向や演出展開が数多く見られる。
異なるメディアミックス化による再構成の体裁をあえて取っていないことに気付くのは容易だが、そんな軽薄な語りに対して取り扱うテーマは『理不尽に奪われた生に残された者たちがどう生きどう足掻くのか』という真摯なもので、空回り空元気を承知で現実で足掻き続ける人物達の姿を描いていることを念頭に置くと、次第にその作風も徐々に呑み込めるという作りで面白かった。

この目的の為に突っ走る感情剥き出しの作劇に乗れないと置いてけぼりを食らうのは否めないが、個人的には乗れた側で冒頭では辟易を誘うようだった会話のトーンや大仰な語り方もクセになるというものだ。

本作はそのテーマに準じたエピソードが連鎖する二部構成で、図書館の一件を終えた後に話がまた継続して『最終的にこの話はどこに向かうのか?』と指針が分からなくなる中盤は見てるのが楽しく、タイルの回収を踏まえたメッセージ性剥き出しのとある歌唱で幕を閉じる爽快感は凄まじかった。かなり良い。しかしそれが綿密に絡み合う二部構成かと言われるとそうではなく、どちらかと言えば共通項を持ったエピソードの足し算による構成なので、長編映画としての散漫さは否定できないのもある。1つ目の事件と2つ目の事件、それぞれは同じテーマを含有しているが、だからこそ"語り直し"の味は拭えないし、それならばスパッと1時間の短編映画として切り上げる方がスマートだったと思う。

とはいえ感情が剥き出しの観客に向かって殴り合いを強要してくるような熱い作品は大好きなので、同監督の映画に対する興味関心は充分に惹かれた。すげー真っ直ぐで本当にいい。
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