ぼっちザうぉっちゃー

ひらいてのぼっちザうぉっちゃーのネタバレレビュー・内容・結末

ひらいて(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

なかなかエグイけどすごい面白かった。
まだ純愛ものは見られる気がしないけれどこういう形の恋愛ものはめっちゃ好き、どんどん観たい。
あと今更だけど学校って基本直方体な空間だから廊下とか教室で、自然に奥行のある画を作れる良い場所だなって気づいた。

恋愛ものと言ったけれど(実際ジャンル的にも「恋愛」に分けられる類のものなんだろうけど)、個人的には恋人以上友達未満というか、恋愛と友情のどちらのベン図にも重なってはいないけれど、恋愛のフィルターを透かして友情を描いているような、そんな感じがした。
それはやはり愛と美雪とたとえを結ぶ奇妙な三角関係が美雪を頂点として成されていることが大きい。それによってプラトニックな恋愛と、セクシュアルな友情というのが脆くも両立してしまう。
そんでなんか美雪の絶妙な可愛さ。なんというかもう全部が絶妙。

とは言え一番はやはり主人公の“愛”の揺れ具合が面白い。
最初どこぞの坂道系かポカリのCMかというようなダンスをして、いわゆる青春をシンボリックに謳歌していた愛が、自分の好きな人、の「好きな人」に狙いを定めてその純真に付け込み、執着していく様は、そのパッケージ、というかアウトラインだけ見れば下世話に言う「闇落ち」のようなものであるかもしれない。だが進めば進むほど、心が堕ちていけばいくほど、方や病気持ちの可憐な少女、方や深刻な家庭不和を抱える質朴な少年、そんな二人の文通のみの清純な交流。というほうがむしろ嘘っぽいほどに綺麗で闇深く感じてきて、それを見せつけられて自棄になるほど自意識をかき乱される主人公、愛の方に一般的な視点があることに気付くのだ。

そんな愛が蹴り倒した桜の木。そこに花を咲かせていたのは一様にピンク色の千羽鶴。それは言わば愛や他の生徒らが一羽一羽自分の手で格好を整えた、青春という「型」にはめた自分たちの「形」だ。それらが舞い落ちる中、真っ直ぐたとえに見つめられた愛の目から、本当に暗がりが消えていたかは分からない。
けれど最後、教室の机で静かに卒業の時を待ちながら愛は、複雑に折り込まれた鶴を「ひらいた」。美雪からの手紙を「ひらいた」。あるいは心も「ひらいた」。そして駆け出し向かったのは美雪のいる教室。
ひらいた折り紙に残った折り目が消えることはないように、彼女の利己的な感情や、青春またはそれ以外の場所で編んできた精神性が消えてしまうことはないだろう。しかし「また一緒に寝ようね」そう言った愛の心にだけは、韜晦は無かったんじゃなかろうかと、(一筋縄ではいかぬ友情方面に対して)希望的に受け取りたい。