【第93回アカデミー賞 国際長編映画賞ショートリスト選出】
コートジボワールのフィリップ・ラコート監督作品。ヴェネツィア映画祭オリゾンテ部門に出品され、NBRでは外国語映画賞を受賞するなど高く評価された。
期待していたほどではないが面白かった。前半は少しダレた印象だが、後半の虚構を挟み方が秀逸でエンジンがかかっていった。
とはいえ終わり方は何の解決にもなっておらず戸惑うばかりの結末。もう少し終わり方に工夫をしてくれたら傑作になり得たのに。
とにかく撮影が素晴らしい。『落下の王国』を引き合いに出しているレビューがあるが確かにそうした要素は感じられる。映像美という点も似ている。
新米囚人の語る王の物語と現実が交錯する。その構成は上手く、新しいものをみたなという気にさせてくれる。
しかしそれが100%上手くいっているかというとそうではない。結局何を言いたい映画なのかが見終わった後に伝わってこない。観ている間は語りの上手さもあり飽きないが、伝えたいメッセージは何かと言われるとよく分からない。
あと少しで傑作になったのにという惜しい作品。語り口自体は新しいしこの映画がコートジボワールから出たという事実も興味深い。洗練された演出やカメラワークは素晴らしいが、もう少し踏み込んでみてもよかったのでは。