マーくんパパ

カビリアの夜のマーくんパパのレビュー・感想・評価

カビリアの夜(1957年製作の映画)
4.0
名作『道』の純粋無垢なジェルソミーナの再来、騙されても棄てられてもクヨクヨしないで生きていく無垢な夜の女カビリアをJ・マシーナが再度熱演。チビでお世辞にも綺麗と言えないマシーナの独特な仕草と表情、市井の底辺で生きる女の活力とイジらしさ、物悲しさが同居した演技に毎回魅せられる。会って間もない男に熱を上げ鞄を盗られ川で溺れさせられる所から始まり、女に袖にされた有名映画スターに声かけられ豪邸で夢の一夜を過ごす筈が女が戻ってきて自分が袖にされたり、貧民に夜な夜な施し物を配る不思議なサンタのような男に会ったり、大群衆の告解に誘われ〝人生を変えさせてください〟とマリア様に祈る。しばらくして入った芝居小屋で催眠術かけられオスカルという幻の男と舞台で踊った直後、深夜の路上で真面目そうな男に声かけられる。奇遇にも舞台を観て感激し自分も同じオスカルという名前で…とデートを申し込まれる。何度かデートしても手も握らない、カビリアのどんな過去も問わない、自分も親なしで苦労したからと言ってプロポーズされる。今度こそ本当の幸せに巡りあえた、マリア様への願いが通じたと唯一の財産の粗末な家も売り払い男の元へ。しかし旅先の湖の断崖に誘い込まれた時、この男も同じだったと絶望し〝いっそ自分を殺してくれ!〟と哀願する。男は気持ちが揺らぎ金だけ持ち去って行く。ここからラストのJ・マシーナの表情が絶品。これだけの残酷な仕打ちを受けても祭りの行列で子供から挨拶されると又やり直そうと小さな希望の瞳を宿すカビリア。去って行った男はいつの日か『道』のザンパーノの様に悔い改める日が来るのだろうかとふと思う。フェリーニもベルイマンも神の救済には冷ややかで人間本来の持っている素朴な生きる力の崇拝者だから。