カビリアの夜の作品情報・感想・評価

「カビリアの夜」に投稿された感想・評価

kaomatsu

kaomatsuの感想・評価

4.7
敬愛するフェデリコ・フェリーニ監督の初期作品の中でも、個人的には『道』以上に、ジュリエッタ・マシーナの奔放な魅力が余すところなく発揮されていて、とにかく大好きな作品。過去に何度か観ていて、特に感銘を受けた作品に対しては、なかなか妥当な言葉が見つからず、レビューしていなかったりするのだが、今回久々に鑑賞して、書いてみた。やはり、主人公の生き様を通して、カラッとさりげなく謳われるフェリーニの人間賛歌は、いつの時代に観ても、普遍的な感動を誘う。

いきなり最悪な冒頭だ。主人公の娼婦・カビリア(ジュリエッタ・マシーナ)が、河原でデートかと思いきや、不意に恋人に河に突き落とされ、バッグを盗まれる。溺れかけ、奇跡的に助けられるが、気落ちする暇もなく、姿を消した恋人にぶちギレし、彼女を心配する親友のワンダ(フランカ・マルツィ)にさえキツく当たる始末。そんな自身の生活を疎ましく思ったカビリアはある日の夜、ローマのヴェネト通りで、ある映画俳優(アメデオ・ナザーリ)と出逢い、彼の豪邸に同伴するというチャンスを得る。だが、喜んだのも束の間、ケンカ別れしていた映画俳優の愛人(ドリアン・グレイ)が戻ってきたため、あっけなくもカビリアは用済みに。その後、カビリアは教会へ行き、祈ることで自身の生活が劇的に好転することを願う。ある晩、興行を観に行ったカビリアは、ステージ上に呼び出され、まんまと催眠術にかかってしまう。その後、それを客席で観ていたというイケメン男オスカー(フランソワ・ペリエ)に出逢い、彼と付き合うことに。自分の職業がオスカーにバレることを恐れつつも、強く求婚され、戸惑いながらも結婚に踏み切るカビリア。家を売り、親友ワンダと惜別の涙を流し合う。ようやく幸福を手に入れたカビリアの人生の行く末は…。

本作を鑑賞したのは何度目だろうか。フェリーニは本作を最後に、デ・シーカや師匠であるロッセリーニから受け継いだイタリアン・ネオレアレスモ路線とは完全に決別し、以後、妄想や夢、トラウマなどが複雑怪奇に交錯する、唯一無二のマジカルな映像作りに没頭していくことになるのだが、宗教と人間の関わりや、奇跡を待ち望む群衆の姿、ヴェネト通りなど、次作となる『甘い生活』と同様のモチーフが既に見え隠れしていて、とても興味深い。そして、かつては『道』のジェルソミーナと本作のカビリアを、愚かで信じやすく、それでも純真さと明るさを失わない、似たようなヒロインとして位置付けていたのだが、今回は、ジェルソミーナとのキャラの明確な違いを再認識した。子供のような純真無垢さゆえ、いつもにこやかで、疑うことを知らないジェルソミーナに対して、カビリアは娼婦であり、故にオトコや世間には商売を通して慣れている。で、とにかくカッカとしてキレやすく、安易にオトコや宗教、催眠術などを信じようとしない、猜疑心の強い女性である。そこが本作の面白さであり、普段は疑ってかかっている数々の事象が、それを覆すような出来事に遭遇すると、たちまちその猜疑心が解け、逆に信心深くなってしまうカビリアの、オトナでありながらも、哀しくもいじらしい乙女心が、本作を『道』とはまた違ったテイストに仕上げているような気がする。自分をなかなか前へ進めてくれない猜疑心というものの厄介さと、それが解けたときの解放感や喜びを、ジュリエッタ・マシーナは本当にたくさんの表情と小さな体いっぱいのジェスチャーで魅せてくれる。特に、彼女が音楽に合わせて不意に踊り出すシーンが多く、顔まで踊っていて、最高にお茶目でキュートだ。

すべてをかなぐり捨てたようなジュリエッタ・マシーナの渾身の演技に、日本映画が誇る名女優の一人、乙羽信子さんがオーバーラップして見えた。無論、フェリーニに対しては、新藤兼人監督を重ね合わせて…。
ゆみ

ゆみの感想・評価

5.0
「道」を再鑑賞したことで、他のフェリーニ&ジュリエッタ・マシーナ作品を観てみたくなった。

とっても面白かった!みんな活き活きしてた。娼婦のカビリアは冒頭から酷い目に遭うんだけど、喜怒哀楽を存分に吐き出すから観ていて悲壮感がなく、爽快感すらあった。いい男を捕まえた時の、周りの娼婦仲間に見せるドヤ顔とか最高ね。タフに生きてて格好いい。乙女な面もあって可愛いし。キュートでずっと観ていたくなるキャラクターだった。

途中、立ち寄ったイベントステージで催眠術にかけられるんだけど、セットもカビリアも素敵なシーンでね。でも、自分がやられるとなったらめちゃ恐ろしい。羽目を外してお酒飲んで酔っ払ったり出来ないのも、どんな自分が溢れ出るかわからない恐怖があるからだと思う。

あるものの引き渡しシーン、自分にとって些末なものでも、他の人にとっては宝物になりえる、って表現なのか、どんな所でも貧富の差はあるって表現なのかわかりかねてるけど、いいシーンだったな。

観終わった後の心持ちは、「カイロの紫のバラ」を観た時と似ていた。多分また観る。
ゑ

ゑの感想・評価

3.8
おんなのひと道でもこういう役だった気がする、ペルシャの市場がかかって保育園の合奏を思い出した
愛すべきカビリア。
どうして、ここまでしてみんなカビリアをいじめるのか。
HAYfilm

HAYfilmの感想・評価

3.9
カビリアの「だれも変わらない」
この一言がいい。

ラストに私たちに見せる笑みと、一瞬軽く頷く仕草に希望を失わない彼女の強さが見える。
この映画のカメラ目線は今まで見てきたカメラ目線の中でも一番心に突き刺さったし、本当に僕自身を見ているんじゃないかと ドキッとさせられた
僕自身もあの場に参加しているような気がした
青山

青山の感想・評価

4.3

付き合っているはずの男に金を奪われ川に突き落とされる女性。流される彼女を見つけた人々が助けるが、意識を取り戻した彼女は礼を言うでもなく悪態をつきながら家に帰り、家でも悪態をつきまくりながら夜を彷徨う......。

この冒頭に、思わず「なんじゃこの女は??」と戸惑いと反感を覚えますが、実はその時点でもうヘデリコ・ヘリーニの術中にあったのです......。

彼女は娼婦のカビリア。
本作は、彼女が男に騙され嘲笑われながらも生きていく姿を描いた映画です。
演じるのはフェリーニの奥さんだったらしいジュリエッタ・マシーナ。本作で初めて見ましたが、素晴らしかったです。ぎょろっとした目と、めっちゃ動く口元。決して美人ではないですが、その表情の激しい動きを見ているとこっちまで嬉しくなったり悲しくなったりしちゃうような魅力がありました。
彼女はとにかく純粋。だから男たちに辛い思いをさせられることばかりですが、それでも泣いて、悪態をついて、また生きていく。だから、冒頭ではなんだこの女と思っていたのに、気づいた時にはそんな彼女の虜になってました。

で、それだけに後半は先が読めてしまってフライングつらみを味わい続けたあげくお約束通りそのつらみは実現するのですが、それでもまだ歩いていく彼女の姿には人生を肯定はしないまま受け入れる強さを感じて泣けてきちゃいました。

とまぁ、全体の感想はこんな感じ。ただ、そんなことより本作は細部に宿るエモさが見どころ。俳優について歩く時の嬉しそうなカビリアの可愛さよ。舞台の上でロマンスを演じる彼女の美しさよ。マリア様を詰る切実さよ。そして、ラストの2人の表情よ......。筋だけ読んだらなんてことないお話かもしれませんが、そういう場面場面の良さがえげつない傑作なんです。だから文章で良さをうまく伝えられないのがもどかしいです。とにかくみんな観て!

カビリアは男に騙され続けるけれど、可哀想でもなければ、汚れてもいない。

もう人を信じまいとするのに、それでもやはり信じて生きてしまうカビリアがラストシーンに表れていた。私達観客に向けた、素晴らしい笑顔で。
KnoT

KnoTの感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の男女がじゃれ合いながら駆けているシーンがすごく好きで、その後の展開には、可哀相なのだけど笑ってしまった。

カビリア、愚かで不憫で…でも最後のあの笑顔。人間は強いね。
ニーノロータの曲は言うまでもなく素晴らしい!
Moeka

Moekaの感想・評価

4.2
気性は荒いが自立心も強くたくましい娼婦のカビリア。男に何回も騙されるもののそれでも踊り、女友達と喧嘩や戯れもし、笑って生きている。ひどい男がいっぱい出てくるように見えて優しい人も実はちょくちょく出てきている。マリア様に祈っても奇跡なんか起きない、それでも最後真っ黒な涙を流しながら微笑むカビリアのすがたは最高の人生賛歌の作品に相応しい。
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