祖母が逝き母は去った。
もの悲しい日々の中、娘ネリーは森の中で同い年の少女と出会う。彼女の名はマリオン―幼き頃の母であった。
人生の選択によっては、自分という殻の中に複数の性質が同居する。したがって親にとっては娘であるし、夫にとっては妻であるし、ネリーにとっては母であるというマリオンが置かれた状況は想像するより何倍も難しいことだろうと思う。
そんな彼女の身になると、親の死を受け入れて前を向くためには母や妻としてではなく娘としての自分で居る時間が一定必要だったんだろうと思うし、それがわかったからこそ旦那さんも穏やかにその帰りを待っていたのではないだろうか。
またネリーからしても、母と友人になることで普段 "ママ"と呼んでいる人物はそれ以前に"マリオン"なのだということに幼いながらに気づいたはずで、だからこそ「いい時間だった」と言ったのだと思う。
「マリオン!」ネリーにそう呼びかけられて振り返る彼女の、驚きつつもどこか救われたようなあの表情はとても素敵だった。誕生日の翌日、彼女はほかでもない"マリオン"として再起する。