どろぬま

秘密の森の、その向こうのどろぬまのレビュー・感想・評価

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)
4.1
『燃ゆる女の肖像』の監督の最新作ということで鑑賞。


ファーストシーンから衝撃だった。

主人公の女の子が、部屋を移動して、それぞれの部屋にいる高齢の女性に「さよなら」と挨拶していく様子を長回しで映していく。そして、最後に少女が自分の部屋らしき場所に戻ると、カットが切り替わり部屋にいた母親らしき女性を映す。部屋を移動する少女の後ろ姿を追っていたカメラは、窓の外を悲し気に眺める母親へと対象を切り替える。このシームレスなカメラワークが、女の子と母親の物語であることを予感させ、同時に隅々まで行き届いた演出に感激した。「これはワンカットも見逃せない映画だ」と。

そのあとの、病院から車で移動するシーンで、運転する母親に少女がお菓子を後ろ食べさせるカットがあまりに愛おしく、完璧な映画の進行に、この時点で大好きになった。


物語は、亡くなった祖母の家に近くにある森で、少女時代の母親と出会い展開していく。奇妙な設定ではあるが、主人公の女の子の表情がいいのだろうか、それとも既に女の子に対する好感度がMAXに振り切っているからなのか、違和感なく受け入れることができた。奇妙なことが起きていることに対して、主人公の女の子に戸惑いがないこともいいのだろう。


二人で演劇をしたり、食事を作ったり、関係性を深めていくシーンはどれもいいんだけど、やはり極めつけはボートで湖の中央に行くシーン。今まで静かに演出した映画だったのに、二人が聞いている音楽が爆音で流れる。理屈は分からないんだけど、しびれる。めっちゃアガる。

二人で過ごした時間が別れの時にどういう変化を及ぼしたのか、僕は分からないし言語化できないんだけど、幼少期でしか味わえない尊い時間が流れていた事はよく分かる。監督のセリーヌ・シアマ。今後新作が公開されたら、絶対に観に行く監督リストに入れよっと。
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