天カス

ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう/見上げた空に何が見える?の天カスのレビュー・感想・評価

4.0
愛に満ちたおとぎ話であると同時に「映画」ってなに?なぜ我々はそれに魅せられるの?という映画でもある。
フィルムの中に真実は存在する。

子供たちはみんなメッシになれるし、犬たちは揃ってワールドカップを観戦する。こんな世界あってもいいじゃん。映画なのだからという遊び心。
その遊び心を持った映画をみることで、現実でのある種の呪いが解かれるようなメタ的な感覚もあった。

観客のことを当然忘れていない、全く観たことのないテロップの使い方にも驚いた。

他のユーザーの感想・評価

菩薩

菩薩の感想・評価

4.0
あらかじめすれ違う事が決められていた一目惚れの二人が再び「再会」する迄のお話なのだが何一つ一筋縄ではいかない。なんせ二人は「呪い」にかかり、再会を誓った翌朝起きたら容姿に能力まで変わってしまう。それでも二人の距離は運命的に近づいて行き、最後は「映画」が二人の偶発的な愛を形にして行く。この「本来起きるわけない事」と「本来起きるべき事」と言うのを描いていくのはきっと映画の責務の一つとしてある事であり、監督はそれをふんだんな遊び心を交えて再現しようとしているのだ…なんて思ってしまったのだが、どうなのだろう…。勿論メッシ率いるアルゼンチンのW杯優勝を監督個人としては「本来起きるべき事」として捉えているのだろうが、実際彼がそのトロフィーを手にする事はないのであって、それを与えてしまえると言うのも映画の力なのだろう。とにかくサッカーが二人の恋愛以上に主軸にある様に思うが、そう言えば二人の「一目惚れ」も足元から始まっている(関係あるのか…?)。イッヌが頻繁に画面に出現してくるのも良いし、イッヌ同士にもしっかりとしたストーリーが与えられている。最後は自己言及的と言うか開き直りに近い一人ノリツッコミの様ななんでやねんが入るが、黄金のエースナンバーが書かれた子供達の輝く背中が有無を言わせぬ説得力を持つ、映画とはおそらくこう言う事なのだろう(どう言う事なのだ?)。俺も毎朝起きる度に別人になりたいと思っているのだが…?
泉くん

泉くんの感想・評価

4.0
ずっとグダグダでもうだめかと思ってたらラストがクソ爽快でお気に入りの映画に。
koki

kokiの感想・評価

4.4
冒頭の数分の明転、物体が画面に映り込む(画面に物体を引き寄せる)テンポから比類なき才能を見せつけられる。

画面の中の全ての存在がそれぞれの間で息をしていて、音楽が映像に波をつけ、ナレーションが物語と観客との距離を一定に保たせている。

たしかに長い尺だが無駄なエピソードはなかったように感じる。(構成はもっと捻りをきかせた方が良かった気がする)

今年の東京フィルメックスで作品賞関連独占。
ベルリンのコンペ入選作。
Q&A視聴済み
あきの

あきのの感想・評価

3.6
東京フィルメックスオンライン鑑賞
最後の畳みかけがすごい。ダークホース感。
説話上に仕掛けられた魔法が、普通のイメージを普通のイメージのまま驚くべき感動に変えている。いや、イメージを変えたというより見ること自体に作用しているというべきだろう。

長すぎることへの不満より画面が勝つことがある
pherim

pherimの感想・評価

4.5
『見上げた空に何が見える?』

夜の交差点で邂逅する男女を、幼木と古い雨どいと監視カメラと風が助けようとするジョージア宇宙。

知ってた。深夜の交差点ってそういうとこだよねっていう序盤からフワリとした着地まで、映画ならではの遊び&心地良さ充満の不思議ロマンス。コーカサス版アメリだよ。
ジョージアを舞台にした(ちょっと不思議な)小話を紡いだ短編集って感じ。映画の進むべき道を示す語り部的なナレーションとあえて過剰に鳴らす音楽。ここまで映したい角度が偏っていると、それはそれで避けられ削られた物語や人物が不意に漏らしてしまう台詞などが欲しくなる。ホン・サンス、ミゲル・ゴメスの影響もそれなりに。閉鎖的な社会を嘆き「映画」の広がり(可能性)を信じているであろう作家、それはそれで否定はしないが俺はそこまで楽観的になれないので。東京フィルメックスオンライン配信で1700円。
めちゃめちゃ良かった。

とても長い時間を過ごしたような気がする
観客に任せる映画ってけっこうあると思うのだけれど、この映画はすごく、頼ってくれているという感じがした

街も空間も人も動物もみんないたな

動物がすごくいい仕事をする
鳥たちの空気の読み方すごい

たくさんの顔と足

そうか世界ってこうだよな

グルジア語の文字
eigajikou

eigajikouの感想・評価

4.0
今年も東京国際映画祭と被っていたフィルメックス。
フィルメックスは配信で見れる作品は配信で見ようと思っていたけど結局配信で見たのは本作だけになってしまった。
(見る時間確保と予算問題)

配信だと集中力が続かなくて残念だった。
スクリーンで見たかったな。

フィクションだよってモノローグですごく主張しているのに映像がそれを感じさせない力を持っている不思議なバランスの作品だった。
子どもたち、犬たちが名演なんだけどどうやって撮ったんだろ。
足元だけを捉えた男女2人の現実離れした出会い、超ロングショットでの2人の再会、話しかけてくる木、監視カメラ、雨どい、風、告げられる呪い、観客への奇妙な注意喚起、そして、2人の外見が朝になると変わっているという呪いの実現、ここまでのあまりにも素っ気ない演出と、それ以後のひたすらナラティブの経済性から逸脱を繰り返し、都市とサッカーの蘊蓄を語る冗長な語りとが対比になっている。いつの間にか見た目が変わってしまった男女の再会はどうでもいいものとなっており、W杯の熱狂に包まれた都市の様子がドキュメンタリーとも思えるようなやり方で延々と映し出され、そして、半ば唐突に2人にかけられた呪いは、映画装置のもとで解かれることになる。あまりにも冗長なヴォイスオーヴァー、つまり語ることと、常にそのヴォイスオーヴァー以上のものを映し出す映像、つまり見せることとの対立がこの作品の原理となっており、だからこそ、最後のある種のマジックは、語ることの見せることへの屈服を意味し、ヴォイスオーヴァーは最終的に、なぜこんなことが起こるのかわからないと降参する。ブレッソン〜ゲリンに至る断片化の伝統のもとにあるようで、そうした厳格さとは程遠いところにある、ふざけたユーモラスな感覚が映画全体を包み込んでおり、作家の被写体と映画への愛が結実した作品になっていると思う。
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天カスさんが書いた他の作品のレビュー

ノーバディーズ・ヒーロー(2022年製作の映画)

5.0

これも凄い良い!!
単線的で一方的な正義感だけで計れるほど世界も人間も単純ではない。本当にこういう人よくいる。最近よくいる。
ドアの開閉や照明の点滅だけで場面を面白くしてしまうのズルすぎる。スマホの着
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湖の見知らぬ男(2013年製作の映画)

5.0

凄い良い!!ここだけでしか繋がれない人たちを湖のほとりだけで描いてしまう。
湖が屋外なのに異界のように見える。まるで一度引き込まれたら出られないかのような。闖入者の警察も殺されてしまうし、主人公も最後
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The Son/息子(2022年製作の映画)

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いや、題材はすごく良かったし、この監督は登場人物が画面からオンオフすることを活かすのが本当に上手いしサスペンスフル。精神的に不安定なものが画面から消えていくこと(見えないところにいってしまう)の恐ろし>>続きを読む

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5.0

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5.0

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