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ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう/見上げた空に何が見える?のAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

4.6


【作品概要】
ヨーロッパの桃源郷と呼ばれるジョージアの古都クタイシ。街中で本を落としたリザとすれ違いざまにそれを拾ったギオルギは、夜の道で偶然にも再会する。2人は互いの名前も連絡先も聞かないまま、翌日白い橋の近くにあるカフェで会う約束をするが、翌朝、彼らは邪悪な呪いによって外見を変えられてしまう。相手も姿が変わっていることを知らず、約束のカフェで互いを待ち続けるリザとギオルギだったが……。

監督は、本作がドイツ映画・テレビアカデミーの卒業制作作品となるジョージア出身の新鋭アレクサンドレ・コベリゼ。2021年・第71回ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞。第22回東京フィルメックスでは「見上げた空に何が見える?」のタイトルで上映され、最優秀作品賞と学生審査員賞を受賞。

【感想】
道端でばったり出逢って一目惚れした男女は、次はカフェで遭おうと約束する。しかし逢瀬の前夜、二人は魔法にかけられて姿を変えられてしまうのだ。
絵空事のような話だが、まるで絵本の世界が現実になったようなジョージアのクタイシという街自体が魔力を持っていて、本作において観客は、そういうものだと受け入れるしかない。

あらすじを読むとボーイミーツガールものを想像してしまうが、そんな類型に易々とはまる作品ではなかった。
物語を語る義務などないよとばかりに、カメラは街や街に生きる人や佇むイヌを追う。
ここでは人もイヌもサッカー観戦に興じる。草も風も雨樋も人に話しかけてくるのだ。

本作において、主役は街なのだ。街に住む人が居て、街が偶然の出会いを用意する。街に根ざした生活があり、それがカフェで食事したりサッカー観戦することでもある。フットボールクラブも街をレペゼンしている。子供達は公園屋通りでボールを蹴る。
多用される足元のショット。街ゆく人のサッカーをする人の《leg》ではなく《foot》を強調するのだ。それはfootballのfootだから、というだけでなく街に根ざした人の営みを写しだす映画だからだ。

気だるい日差し、魅惑的な弦楽器の調べ、アップで写しだされる笑顔と褐色の髪、丸っこくてかわいいジョージア語のテロップ、。
すべてが他では得難い、奇妙で幸福な映画体験だ。
この内容とトーン&マナーにたいして150分という上映時間や、自由すぎる作風は、ドイツ映画アカデミーの卒業制作だと知ると納得。商業映画では絶対つくれない冒険でもある。
「ガーマルチョバ!!」
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