幽斎

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイドの幽斎のレビュー・感想・評価

4.0
これはアホなアルバトロスの予告編で大分損してるな、と言うのが第一印象。ドイツ製ラヴコメと言うのも希少価値だが、当然の様にSFに哲学的要素をブッコンでる。アカデミー国際長編映画賞ドイツ代表。ベルリン映画祭銀熊賞ノミネート。京都のミニシアター、京都シネマで鑑賞。

フィロソフィー的には邦題とは裏腹にドイツらしくシリアスな面も有り、基本的にプロットも生真面目。その上で「人の心」と言うディープ考察と、ロボットに依るセラピー的な寓話と呼べる雰囲気に支配される。感情を持たないロボットをアンチテーゼとして、人の心の本質を映し出す。SFらしく知的なシミュレーションの顔を持つのも、ドイツらしい感性。チョッと堅物だけど(笑)。

本作は99%女性目線、女性の思考に阿ったパターンに何の躊躇いも無い。私達の生活はGoogle無しでは有りえず、検索する言葉を少し入力するだけで勝手に候補が出てくる。Amazonで買い物すればお勧めを教えてくれる。初めの頃は皆さんも少なからず反発したでしょう、自分の心は簡単に読まれないゾと。望み通りに事が進んでも人は反発する生き物。だから生命の進化に残れたとも言える。

「自分には全て」人とは失敗を繰り返す生き物。日々の生活に一喜一憂する、それを乗り越える事で成長できる。ビッグデータで分析され、AIが最善手を考え解決する、それに心理的抵抗を覚えるのは人としての摂理でも有る。女性特有ですが、例えば妻はその日の出来事を仕事から帰った夫に話す。これ話すだけで「相談」では無いのです。しかし、夫はラジカルに「で、何が言いたいの?」と解決策を考える。女性は自分の話に共感して欲しい、悩みを聞いて欲しいだけ。私の様に余計な事を言わず黙って聞いてる男は(笑)。

人は何故、ロボットを人間と同じ型にしたがるのか?。人間に有ってロボットに無いモノ、それは「感情」です。心と自意識の違いをどれだけの人が認識してるのか定かでは有りませんが、例えば質感としての世界観、「Qualia」クオリア、感覚的な意識の事を脳神経学で「感覚質」と言いますが、フランスの哲学者René Descartesの有名な一説「我思う、故に我在り」これはターミネーターを始めとする、全ての人型人工物のテーゼと言える。

アメリカ人は現在でも人型ロボットを「恐れ」ます。スタートレックのミスター・スポックに感情が無い様に、SiriとかAlexaに「心」が宿ってるとは誰も思わない。一方で日本人の私達は子供の頃から「血の通った」ロボットと接する事が当たり前に感じてる。だから、ロボットと抱き合って泣いたりする。最先端のテクノロジーでも、クオリアを持つAIはこの世には居ない。本作は「心の無い相手」を愛する無自覚、主観意識を深堀りした他に類を見ない強いメッセージを秘めてる。

此処まで書くと私の「裏」生涯1位作品「ブレードランナー」と同じテーマ性に気付く、レプリカントとは何なのか?。本作でロボットは鹿に囲まれる。ロボットに「心」が無いから動物も警戒しないと強調するシーン。一方で精巧に作られたロボットを人間は識別できない。人間である意味とは「不完全な生き物」逆説的に言えば人はロボットには、何も勝らない。ロボットは工業製品なので、もしロボットに「心」が芽生えれば人権問題が発する。それは新しい奴隷制度の始まりを意味する。

日本人にはピン!と来ないかもしれないが、アメリカでは人口爆発に地球が食料的にもエネルギー的にも何より環境的に耐えられないと、ハイレベルの人達の界隈で真剣に議論されてる。その為には人を「減らす」必要が有る。何だか先の参議院選挙で1議席を獲得した団体の様だが(笑)、それを中国由来として壮大な実験が地球規模で行われてる。無症状でも後遺症で確実に死に至る。ロシアは何故ウクライナの軍事基地ではなく、民間人が住む所ばかり攻撃するのか?。日本の少子化も大局的には願ったり叶ったり。だから賃金は一向に上がらない。ロボットに感情が無く、AIとして社会を動かせば、恐らく地球には人間自体が「不要」だとサジェスチョンされるだろう。本作でも人間の研究者が何年も掛けて発見できない事を、ロボットは一瞬で見つけた。

ロボットが支配する社会、何も悲観する事は在りません。例えば「戦争」は無意味だと判断され起きないでしょう。秀逸なのは、本作はAIが発展すれば人間の様な「心」が芽生える事を明確に否定する。Robotはチェコ語で「ロボットの明確な定義は事実上存在しない」。私もテクノロジーが深化してもロボットに感情は芽生えないと思う。それは「無駄」だから。ターミネーターは実に思慮深い作品、同時に人間は肉体を離れ「魂」だけが存在価値が有る、そうマトリックスの様に。

「Objectification」オブジェクティフィケーションを否定した、女性へのメンタルヘルス。
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