このレビューはネタバレを含みます
チラシの女性の横顔の表情に惹き込まれました。
イランの映画を初めて映画館で観るのは初めてでしたが、素晴らしかったです。
冤罪という重いテーマでしたが、まだまだ社会的な弱者の立場が弱く、偏見がある風潮の中で、懸命に生きているミナとその娘ビタ、、、
無実の罪で処刑された夫への謝罪を求めて裁判所に何度も出向くミナを、相手にしない裁判所の冷たい対応、、、ミナが求めているのは賠償ではなく、心からの謝罪でした。
運命的のいたづらもありましたが、誤審をした判事のレザが身分を隠して、
ミナ家族への援助を申し出る、レザは個人的にも自己嫌悪へのストレスと
息子の兵役参加と戦死の訃報から倒れる。
レザを献身的に介抱するうちに、ミナとビタにもレザへの親しみが増して、
3人は家族のように距離を縮めていく。
そんな幸福な展開のなか、心ない悪意の電話で、ミナはレザの正体を知ってしまう。車の中の無言の涙、、、、とても悲しい場面でした。
タイトルの白い牛で始まり、ミナが務めるミルキー工場、そして最後のミルクの温め
赤い口紅、、、華やかな気持ちで団欒の前にミナが塗る、そして最後のシーンの前に決然と鏡の前で赤い口紅を、、、
白も赤も実に象徴的でした。
演者のミナのくじけない強さと美しさと夫への貞淑、何とか報いるために
判事を辞してミナ家族に近づいたレザの優しさと煩悶、大きなつぶらな瞳で
映画に没頭しながらもミナとレザに心を寄せる可愛らしい天使のようなビタ、、、、
次の世界では、、、本当の家族に生まれ変わることができたら、どんなにいいことか?夢想してしまいました。
ラストからセリフを敢えてなくした展開には、色々なことを思いました。
素晴らしい作品、制作スタッフ、キャストの皆さん、ありがとうございました。これからも、イラン映画を観たいと思います。