しん

アンラッキー・セックス またはイカれたポルノのしんのレビュー・感想・評価

3.0
露悪性の極致を行くような作品です。好きな人はとことん好きだし、嫌いな人は絶対に受け付けないのではないでしょうか。個人的には第三章辺りから作品の見方が分かってきて、頭の中で前半の意味も繋がってきたって感じでした。

こういう作品であらすじを書くのも野暮だとは思うのですが、女性教師のセックスビデオの流出に端を発するコメディで、問われているのは人間の「あるべき像」と「本能」の葛藤です。クライマックスは第三部で、そこで沸騰する差別意識の多様性と根深さを楽しむ作品です。ラストは、ハリウッドとかのアホらしさに辟易している私としては爽快でしたね。

ただ本作の本質は前半の二つの章にあると思います。生活世界に潜む細かな対立、気持ちのいい言葉の裏にある「本質」のどす黒さを示す前半が、後半への振りとして効果を発揮します。第二次世界大戦では枢軸国から連合国へ、戦後は典型的な社会主義独裁国家から革命の象徴(チャウシェスク処刑)へ揺れ続けてきた国(ルーマニア)だからこその説得力がありますし、その部分をサブリミナル的に植え付ける前半になっています。被害者ずらをしながら加害責任を忘却する様子は、他人事ではない切迫感があります。

名作かと言われると難しいですが、見て損はない作品だと思います。
しん

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