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座頭市の歌が聞えるのcatmanのレビュー・感想・評価

座頭市の歌が聞える(1966年製作の映画)
4.0
ネタバレあります

例によってタイトルはいい加減で、『座頭市の歌』なんてものは聞こえない笑
シリーズ13作目、マンネリ化の打破を狙った意欲的なアイディアが随所に見られるんだけど、どれもイイセン行っていながら完全に消化し切れて無いと言う印象。例えば市と同じ盲目の琵琶法師。出会って直ぐにイチの罪深さをズバリ指摘する、カンフー映画に登場する老師の様に超然として謎めいた深みのあるキャラクターなのに、いつの間にか途中退場してしまう。また座頭市の聴覚を奪うために大量の太鼓を打ち鳴らしながら襲い掛かると言う地元ヤクザの秘策も、本来はクライマックスを盛り上げる仕掛けとなるべきなのに市はさほど苦にせずバッタバッタと敵を斬りまくってしまう。何だったのアレ。ユーモアが殆ど無いことも残念。
しかしながら、それらを補って余りあるのが勝新の存在感と見事な殺陣(SE控えめで◎)、そして宮川一夫の撮影による映像美。橋の上で繰り広げられる殺陣のシーンをロングショットで捉えるカットは、逆光によるシルエットがまるで影絵芝居を思わせる美しさ。

小川真由美が演じる女郎はやっぱり描き方が中途半端ながら、その美しさと退廃的な色気は本作の白眉のひとつ。婆ちゃん役の女優さんもいい味出してる。
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