ごんす

ボーはおそれているのごんすのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.6
「みんなが不安になるといいな」と凄くチャーミングに笑うアリ・アスター監督からの最新の贈り物。
アリ・アスター作品は大好きだけどディスる側に憧れていて、このセンス認めない方がクールなんじゃね?という自分の小物感を刺激される。
結局いつも大好きになってしまう。

この変態(誉め)どんな癖があったかなとおさらいのため『ヘレディタリー』『ミッドサマー』を見返して『ミッドサマー』に関しては止めとけばいいのにボーを観に出かける前にディレクターズカットの方を鑑賞してから映画館へ。
ボーが3時間あるのに『ミッドサマー』ディレクターズカット(170分)観てまぁまぁ疲れてから観に行くとか映画館でよく眠るマンには自殺行為。

しかしいざ映画が始まると予想を超えて笑わせられた。
酷い目に遭ってる人を観て笑うというのは自分の性根を見つめ直す必要がありそうだが笑える。 

常に不安にかられている中年男性のボーがお母さんに会いに行くだけの話。
そして演出や浮き上がってくるいくつかのテーマは過去作と結構同じかなという印象。
好きな人は作家性として興味深く思うのだろうけどアリ・アスターが苦手だったり初めての人は結構だるかったのではと推察。
笑うしかない時間は過去作と比べても圧倒的に長かった。

今回も家族についての映画で母と息子の関係や母性について不安や宿命などなど考えさせられることは多いが悪夢そのものを体験した気分。
起こったら最悪のことはだいたい見せてもらったし凄く極端だけど視覚化されたボーの不安は結構分かる所もある。
分かるけど映像にされるとこんなに笑ってしまうのか。

自分じゃないのに同じアパートの住民から音がうるさいと苦情が入りまくったり
家の鍵を抜き忘れたら鍵がなくなっていてそこにゾロゾロとヤバそうな人達が入っていく映像は凄い面白かった。

このホアキン・フェニックスを観て俳優という仕事ができる人って改めて正気じゃないと思った。
体や精神にかかる負担考えただけできつい。
ホアキン・フェニックスがこの映画の撮影中一度気を失ったとのことなので一般人が体験したら存在ごとフワッと消えてなくなるぐらいの負荷が身体にかかるのであろう。

アリ・アスターが過去作から繰り返し使っている演出をざっと思い出すと

・逆さまのショット
・天井
・全裸
・顔面破壊
・首なし

などがあって、特に全裸に関してはもうとにかく裸が面白い!みたいに思ってそうで深みを感じない。
今回は特に一番子供っぽい裸笑いだった。
なんかもうアリ・アスターの顔見るだけで「あぁこの人が裸面白いと思ってるのか」と笑えてくる。

宿命の地みたいな場所に到着するとやはり逆さまに映すし、必ず映画内で顔面を破壊される人がいるというのもお約束。
そして今回の天井は序盤と終盤ともに最高だった。

作品を観るといつもアリアスターってどういう人なんだろうと考えてしまう。
どれも凄く下敷きになっているテーマは実体験なんじゃないかと思うし今回のボーもかなりパーソナルな映画なんじゃないかと思う。
自分はどの作品を観ても一度は自分の家族のことを思い出す。
特に自分からすると暗黒期と思っていた頃の家族(幸い映画のような形で暴走はしていない)
家族というのは描きたいテーマとして強いのだなと改めて感じた。
次の作品はボーまでの三作のようなテーマとはまた違った作品らしいので楽しみ。
ごんす

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