けむり

ボーはおそれているのけむりのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.0
巷では3時間の地獄だとか濃縮還元の狂気だとかいろいろ言われていましたが、私はアリ・アスターハラスメント略してアリハラ映画と表現させていただきたい。

ジョーカーでもう懲りただろうが!?と思ったんですがまだいじめたりなかったのかアリ・アスター?
クラスのいじめっ子が遠巻きに見てた冴えないやつに「おいお前もいじめてみろよw」って言ったら目の前でガラス食わせて「ほら、これだけやればもういじめられないよ」って笑いかけるみたいなそういう狂気を感じたよ。

この映画を観ていわゆるアダルトチルドレンに対する憎悪というか、侮蔑というか、いわゆる問題意識の深刻さって日本より西欧のほうがはるかに強いのかもしれないと思ったり。
邦画だとまず見ない文法。さすが電車男の国。
ところがマッチョ社会アメリカではそうはいかない。弱者のままで生きたいなんて惰弱な思想は持つことさえ許されないわけ。
だから弁護人も投げ落とされる。もしかすると日本以上に自己責任の国なのかもしれない。
去っていく観客の冷たさはまさにそんな感じ。この映画見て「で?」ってなった人たちみんなあの観客と同じだってことだ。性格が悪すぎるぞアリ・アスター。

あとこの映画のおかげで長年疑問に思ってた『西洋人女怖がりすぎ問題』、ちょっと分かった気がする。
ラース・フォン・トリアーの映画とかこないだ見たLAMBとかそうだけど、たぶん女っていうか“ママ”が怖いんだ。
まともな親元で育った子供はこんなこと考えないんだけど、まさしくボーのような子供は母親、つまりは女に潜在的嫌悪がある。
各監督の家庭環境は存じないけど、ラースも長く鬱だったもんね。前述したアダルトチルドレンと母親との因果関係はほぼ直結してると言っていいのかもしれない。

人間が抱える原初の恐怖ってじつはママなのかもしれないなあ。
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