Kaji

ボーはおそれているのKajiのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

耳なし芳一の全身お経で耳を切られるとか、カチカチ山での背中の荷物に放火される、とか悪い魔女が墜落させられるとか、竜巻で家ごと飛ばされるとか、頭につけてる金輪が締まっていくとか、子供の頃からそんなシーンがおはなしの骨組みより頭に残り続けてる大人としては、え、こんなことあっていいの?ってそっから先が入ってこなくなるぐらいインパクト強強な場面がずっと続く映画でした。

あまりに酷い話をコメディにできてしまう人間の頭が何によって縛られているのか、ボーが不安を理由に避けている決断には幸福の糸口があったのかもしれない、そんなことを思いました。
すんごい濃密な不運の連続に、木々が一瞬怪物の顔に見えるような心理状態が続き、
あの荒廃した街、あの郊外の家、ペンキを飲むティーン、あの演劇、あの屋根裏、もう全部、繋がってるのが不思議で。ドラッグ?夢?なに?って引き込まれてもう。



 何者だとも問われない夜空とボートの一瞬にだけ訪れるボーの安堵と孤独の滋味には共感します。
 ひとかどの人間でなければ非難や軽視をされるこの世へのアリ・アスターの洞察力とアンチテーゼ、監視と愛の違い、寓話の残酷さは教訓があるから許されるのおかしいじゃないか、それも人が作ったもんなんだろ?これもさって監督の柔和な笑顔が浮かびます。「ユダヤ系にとってのロードオブザリング」ってほんと見事な言い方。
ユダヤ教の知識があれば、読み方が変わる映画なんでしょうね。
しかしながら、宗教への造詣がなくてもじゅうぶんに波に乗せていく手腕で最後まで飽きませんでした。
すごい作品を観ました。アスター監督天才ですね。
Kaji

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