ShuheiTakahashi

ボーはおそれているのShuheiTakahashiのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

全てに拒絶され続けるボー。
走馬灯をずっと見ているようだと感じた。
ボーが求めていることとおそれていることがごちゃまぜに押し寄せてくる。
出てくる登場人物たちはボーが今まで出会ったことがある記憶から。

序盤、セラピスト?
がボーに母を殺したいかみたいなことを聞いていて、まさかそんなとボーが答える。
セラピスト?は何も珍しいことではない。誰もが望んでいて、誰もが望んでいないことだ的なことを言っていた。

それを見ている気がした。
ボーはすでに新薬かクモに刺されて死んでいて、隣の部屋からのクレームから既に死んでいたのではとか思ってしまう。

母の死を望んでいながら望んでいなかったからこそ、死んだと思ったら生きていて、初恋の人とセックスをして、自分が死ぬと思ったら相手が死んで、一度も射精しなかったから精巣がパンパンになり、父親が性器の化け物となる。
母の会社の人から手厚く介抱されると同時に監視され、違う人の息子になりたいと願いながら、それでも母を求めて、戦争に行きたかったが行きたくなくて、別の人として生きたいと思いながら、自分を手放せない。
死にたくて堪らなくて、生きたくてしんどい。

矛盾する自分、自分がばらばらになるようで、全部ごちゃまぜ。
そんな自分が大嫌いで大好きで大事。

ラストは母への後悔と、憎しみと諦め。
死を受け入れるまでには5段階あるという。
否認、怒り、取引、抑うつ、受容。

などと色々と考えるが、3時間全く飽きずに見入ってしまう。
起こることに面白さがあるから、何が起こるのか何が起こっているのか夢中で観ていた。

これが全て現実で、ボーが単に精神病患者で、母親が街ごとつくり、超監視体制を引いているという線もありだし、実際はそうかもしれないけれど、個人的には恐れながらも求めているものを見ていると感じた。
そしてそれは誰しもが持つものだと思う。
生きたいけれど死にたい。
などなど。
矛盾した社会で矛盾した気持ちを抱えながら生きる。

オープニングが最高だった。
生まれてくること自体が苦痛なんだ。
でも生まれてしまった。
辛いこと苦しいことばっかの世の中でどう生きる?
そう問われている気もした。

ラストは羊水に還る。
それはそれで幸せかもしれない。
やっと故郷に帰れたのかな。
もう生まれたくないな。
それともボーは生まれ直したいのだろうか。
ShuheiTakahashi

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