人の心情を明確に伝える演出、カメラワーク、そのためのテンポの良いカットは秀逸。それにより「不安」の起因や、それに付随して生まれる呪いや欠陥など、さまざまな側面についてよく考えさせられる。
ただ、この作品のラストにある「不安×不安」をぶつけ合う対話の後、それぞれが抱えるやり場のない想いと、彼らがどのように世界と向き合うのかにもっと焦点が当てられている作品だと良かった。ラストで形成される関係性から、その先にある世界との対話が十分に描かれていないように思う。
また、お互いの想いをぶつけ合った後の—許しを請う、殺す、見捨てる—などがあまりにも簡単に決断できているように見えてしまい、人物が平面的で陳腐な印象を受けてしまった。映画だからこそと思えば納得できる部分もあるが、それでも人と考えると理解し難い。
