都部

エッシャー通りの赤いポストの都部のレビュー・感想・評価

3.5
『人生のエキストラでええんか!?』と問い掛け、時に当たり散らし、そして叫び走り去っていく園子温の原点回帰作。
ワークショップで集結した新人俳優達をかような形で纏めあげ、全員に印象的な個性を持たせるのは流石。しかしテーマに対して尺が長すぎるのは否めない。これは参加した俳優を全員拾い上げるという趣に映画が依存している故だが、そうした意味でインディーズ寄りの作風に振っていると言われると分からなくもない。
しかしそれがインディーズ賛歌かと言われると首を傾げる筋書きで、不秩序な乱立が熱度ある混沌に至るには狂気が足りていない。だからあくまでも原点回帰風に納まっているのが少々残念。
映画のエキストラ達の青春群像劇が導き出す結末自体は滅法好みで、主演二人の面構えは上々で特に安子の作中での躍動は痛快極まる物がある。園作品特有のメッセージの使者として、カメラを前に剣呑な言葉を吐き続ける気合いの入り方が実に良いね。長い長いエキストラ達の話で、それ自体がほとんど交差することはないが、最後の撮影シーンは目頭が思わず熱くなる。
完成度は高くないが、欠けてて上等!の精神はそうした心根を命を削って訴える映画として評価したい。
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