みんと

ヘカテ デジタルリマスター版のみんとのレビュー・感想・評価

3.9
気になってたダニエル・シュミット監督を初鑑賞。

第二次世界大戦下のモロッコを舞台に、外交官の男が赴任先で出逢った人妻に身も心も奪われていく様を描いた作品。

愛に溺れた男の彷徨いと破滅を赤裸々に描き、そのリッチで芳醇な雰囲気と味わいは、さしずめ高尚な官能映画と言った印象さえ受けた。

ストーリー自体は至ってシンプル。神話的要素はこ難しくも感じるけれど、深く考えすぎず雰囲気に浸れる作品でもあった。

ブルーを貴重としたトーンを抑えた映像が美しい。
そして心を掻き乱す。
更には格調高さすら感じるのは甘美な劇伴による所も大きい。濃厚なラブシーンに重ねる音楽とは思えない斬新さも新鮮。

また、主人公の醸し出す優雅さや品はディオールの衣装が確実に一役買ってると思う。

タイトルの『ヘカテ』とは、ギリシャ神話の魔術と冥府の女神の名に由来していて、
魔術の支配者であるヘカテは、狂気や死を司る女神で、劇中でも語られている通り、ジュリアンを破滅へと導くクロチルドの姿と重なる。
また冥府神とは、夜と暗闇、浄化と贖罪を司るものである事から、夜のシーンが象徴的で光と闇のコントラストを効かせ描かれていた。

制御出来なくなった愛はここまで暴走するものなのか!
無邪気さと悪意のないファム・ファタールは、ほとほと罪だなぁ…
溺れてしまったジュリアンを気の毒にすら思えるけれど、同時に至極人間らしくも思えたり。


個人的には、ヒロインを別の人が演じてたらどうだっただろう…
若干の不完全燃焼は好みの問題だと思う。
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