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アミューズメント・パークのくりふのレビュー・感想・評価

アミューズメント・パーク(1973年製作の映画)
2.0
【ジェロントフォビア・パーク】

アマプラ見放題にて。あまり興味はなかったが、53分という短い尺に惹かれて。

ロメロの初期作品ゆえ発掘されたそうで、確かに彼らしい極端さが発揮されてはいる、か?でも教育映画なのに、ただ混乱を見せられた。こんなんが生まれてしまう事態は面白いが。

日本より欧米の方がより、老いを醜いと捉える文化らしい。そこに恐れがあるなら原因を紐解いて、どう対処すべきか描くのが教育映画だと思うけど…そこに向き合うのではなく、ただ病状を短絡的にダラダラ撮っちゃったんですね。

ルーテル教会が発注時、どう依頼したのか知らぬが管理ユル過ぎ。それに本作が時代の病理を示しているなら、どうすれば救われるかを布教するいい機会じゃないの?お蔵入りで終わらせたら、自分たちの教えには現実を変える力がない、と証明するようなものでしょう。

人生の遊び場でもある遊園地に老人を放り込む、というアイデアはいいのにね。それだけで、例えば“孫の付き添い”という脇役にされるから。余計な誇張をせず、日常をそのまま提示する中で気づかず、または気づかぬフリしていた症例を、炙り出せればいいと思うんだけど。

日常生活レベルで観客とシンクロした上で、例えばあのフリークショーまでブッ飛ばしたら、自分ごととして冷汗の出る、ホラー映画に仕上がったかもね。

始めっからシンクロ率ゼロで胸糞描写を重ねても、ただ拒絶されるだけじゃないか?最後に主人公が泣き出すシーンなど、一緒に泣けるどころか、ワザトラし過ぎて笑っちゃった。

物語より、舞台となったウェスト・ビュー・パークに興味が湧いた。1906年に開園し、71年続いたそうな。なんと、本作完成の同年に全焼し、1977年に閉園してしまったそうな。

老いる恐怖を描く本作で、遊園地も老いており死ぬ寸前だったとは…なんとも皮肉です。ローリング・ストーンズの公演も行われた場所だったのに。

忘れていないのなら、人生には、年齢を重ねる楽しみが確実にあります。そこから目を背けるなら逆に、こういうテーマで説得力ある映画など、できるわけがないでしょう。

<2024.1.16記>
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