ゆず

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のゆずのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

※個人的な備忘録です



1.【あの男】

物語序盤、哭倉トンネルを潜った鬼太郎と目玉の親父が会話をしているシーン。目玉の親父は「あれから70年…あの男も来てるかもしれん」と呟く。→あの男とは誰のことなのか。水木か?でも70年経ったら水木も100歳近い爺さんでは……?

2.【市松人形の女の子】

水木が哭倉村に向かう電車のなか。市松人形を抱えた女の子が咳き込んでいる。
劇中中盤、工場と呼ばれるMの血清を作る地下施設にて、捨てられた市松人形が映る。そしてそこに横たわる1人のゾンビが、やたらと咳き込んでいる。→電車に乗っていた女の子も捕まり幽霊族の血を打たれてゾンビ化していたことが察せられる。

3.【当主のお役目】

時貞が死亡し、時麿が次代の当主となる。長女の乙米が時麿に「あなたに務まるんでしょうね…?」と囁くシーンがある。→務まるとは一体何のお役目を指すのか。
ちなみに時麿は後に惨殺され、代わりに乙米がその役割に臨んだとされるシーンがある。しかし「私にはやはり…(無理)」と言って倒れ込んでしまう。

4.【弱まる穴倉の封印と、それを恐れる乙米たち】

封印が綻び、3日ほどでそれは解かれるという。乙米は一刻も早く時弥を連れてくるように三女、庚子に言いつける。封印が解かれれば、龍賀たちは皆殺しにされてしまうと。
→龍賀の当代当主の役割とは、禁足地である穴倉の結界の維持ではないか。
当主は山腹にある神社の宮司も兼ねるという。それは霊験あらたかな者だけが務まるはずである。霊能者として才のある者が当主となり、穴倉の結界を維持し続けるのだ。
封印(結界)が破られた時、穴倉に押し留められていた狂骨たちが湧き出て世界を滅ぼす。
本来は時貞の元で修行を積んだ時麿がこの結界を維持する筈だったが(実際に殺害された場所は山腹にある社のなかだった)、さよちゃんにちょっかいを出した為に殺されてしまう。
そこで長女の乙米がこの役割を引き継ごうとしたのだが、彼女には霊能がなく、また裏鬼道衆に任せるわけにもいかず、時弥に任せることにしたというわけだ。

5.【時弥(ときちゃん)は誰の子?】

劇中で1番の不遇に見舞われたときちゃん。彼は龍賀家三女、庚子と長田(裏鬼道衆のリーダー?)との間に生まれた子であるとされる。
しかし劇中終盤でラスボスの時貞が自分の肉体の代替品として時弥を作らせたと語っていることや、次代当主として申し分ない霊能を備えていたことを鑑みるに、おそらく時弥は時貞と庚子の間に生まれた子なのだろう。
時貞は自身の後継(肉体の代替品)を作ることに熱心で、それは霊能を備えた肉体でなければならない。なぜなら当主には封印の維持と、狂骨やら妖樹やらの管理という責務が付きまとうからだ。
そこで白羽の矢が立ったのがさよちゃんだった。彼女は霊能を強く受け継いでおり、生まれてくる子は乙米が言うとおり当主として申し分ない霊能を備えていることだろう。
しかしながら、さよちゃんが時貞の子を宿すことはなかった。なので仕方なく庚子に…といったところか。もしかしたら沙代さえもが、時貞と乙米の間に生まれた子なのかもしれない。

6.【乙米と長田の関係】

闇堕ちしたアスランこと長田。彼は裏鬼道衆を束ねる立場であり、そして乙米の忠臣である。
平時では乙米を「奥様」と呼ぶが、最後に乙米を名で呼ぶシーンがある。
もしかしたら長田は乙米に対して忠義とは別の感情を抱いていたのでないか。

7.【龍賀姉妹の名前】

長女、乙米。次女、丙江。三女、庚子。
これらは十干と呼ばれる10の言い回しが元ネタ。甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸と続く。もしかしたら他にも姉妹が居たのでは…と勘繰ってしまう。

8.【ときちゃんの体調不良は何のせい?】

時弥は身体が弱く、外を走っているだけで沙代が驚いてしまうほどだ。彼は時折激しく咳き込むが、これは病気が原因なのだろうか。
たしかに序盤の列車の中にも咳き込む女の子がいた。もしかしたら子どもの流行り病なのかもしれない。更に言うなら時弥は近親相姦で生まれた子である。同じ遺伝子が結びつく場合、劣性遺伝子が表面化しやすく病気の子どもが生まれる確率は高くなる。それを踏まえると、時弥の咳は持病なのかもしれない。
ただ、そんな病弱な子どもの肉体を時貞は欲するだろうか。
時弥の咳や体調不良は、肉体を乗っ取らんとする時貞の術の影響だったと考えるのが自然だ。時弥は明るい未来ばかりか、肉体と健康さえ奪われた可哀想な子だったのではないか。

8-2【病弱な時麿?】
思えば、時麿も当初は「病弱で滅多に表に出てこない」という話があった。
もしかしたら時貞の新たな肉体として時麿も候補にあったのかもしれない。そして術の影響で床に伏せることが多かったのではないだろうか。だが時弥が生まれたことでお役御免となり、術から解放されて元気になったのでは?

9【龍賀と裏鬼道衆】
鬼道の理から外れた者たち、外道。それが裏鬼道衆である。外法を操り、ときに狂骨さえ使役するが、その術は龍賀の者たちの方が上手(うわて)である。
沙代は長田の呪具を破壊するほどの狂骨を使役したし、時貞にいたっては最強の狂骨の使役や反魂の術までやってのけた。
龍賀が裏鬼道衆を拾ったと劇中では説明があり、明確な主従関係にあるように見えたが、裏鬼道衆の術を龍賀が使えるのは腑に落ちない。
実は龍賀と裏鬼道衆には血の繋がりがあるのではないだろうか。実際、長田と庚子が結婚しているくらいだし、穢多非人のような扱いを受けているわけでもなさそうだ。

10【心を亡くした男、その手記とは】

龍賀の次男、孝三はゲゲ郎の妻に一目惚れし、一族を裏切って彼女を妖樹から解放しようとした。しかし裏鬼道衆に阻まれ、心を破壊されてしまう。命を取られなかったのは、裏切り者とはいえ龍賀の一族であったからである。
そんな彼は手記を残しており、それは最終的に水木の手へと渡るのだが、その手記にはいったい何が書かれていたのだろうか。
手記を読んだ後、水木は「これを持ち帰れば俺の仕事は完了だ」と呟いている。
水木の目的とは龍賀の次代当主とコネクションを繋ぐこと。そしてMの精製方法を探ることである。即ち、孝三の手記にはMの精製方法、更に言えばその原液となる幽霊族やゾンビ化した者たちのことがつぶさに書かれていたのではないか。
Mの精製工場の場所を知らない水木と沙代(20にならないと教えてもらえないと語っていた)が、ゲゲ郎救出に駆けつけることができたのは、きっとこの日記のおかげであろう。

11【穴倉の結界と龍賀の真の目的とは】

穴倉に張られた結界。そして溢れかえった狂骨。これらは龍賀の目的の副産物に過ぎない。
龍賀の真の目的とは、血液精製剤(M)を大量に製造し、日本のサラリーマンを元気づけて日本復興を果たすことである。戦争でボロ負けしたから今度は経済的にのし上がって見返してやろうというわけだ。
その為に幽霊族を捕らえ、妖樹の養分として血液を採取していたわけだが、その過程で大量の怨念が発生しそれは狂骨となった。このままでは狂骨たちが龍賀や日本人を根絶やしにしてしまう。そこで穴倉に呪詛返しの結界を張り、幽霊族たちの怨念を閉じ込め操ることにしたというわけだ。
最終的に独鈷を抜いた穴から大量の怨念が溢れてきたことを鑑みるに、龍賀が押さえつけてきた怨念は幽霊族だけに留まらないのだろう。

12【沙代の近親相姦に対するアンチレビュー】

たまにレビューで散見されるのが沙代の近親相姦についてのクレームだ。
曰く、必要のない設定であっただろうと。子どもに見せるには題材が重た過ぎる等だ。
個人的には近親相姦の設定は妥当に思えていて、龍賀の霊能を守るという観点と、沙代が一族に対して並々ならぬ憎悪を抱く動機づけとして必要なことだったと考えている。

13【分からなかったこと】

乙米は時貞の肉体乗っ取りの計画を知っていたのだろうか。また時貞も最初から時弥の身体を乗っ取るつもりなら、なぜ当主の座を一度、時麿に譲るという回りくどいことをしたのか。最初から遺言で時弥を指名すればよくない?
更に、劇中で乙米が「沙代を連れてきて時弥とつがわせましょう」と発言しているのだが、その意図が分からない。
時貞は時弥の身体を乗っ取るわけだし、新たな肉体は必要ない筈。ということは乙米は時貞の肉体乗っ取り計画を知らなかったのか?
いずれにしてもこのタイミングで家族計画をする意味がわからない。水木を挑発するためだけの発言だったのかもしれないが…。
ゆず

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