ナラトモ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のナラトモのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

非常に素晴らしい作品でした。

絶望してヤケになって全てを破壊したい気持ちは痛いほど理解できますし、実際に私自身も魔が差してそう考えてしまう時があります。
しかし、実際のところ世界が滅びるときは真っ先に時貞のような最悪の人間が死ぬということはそうそうなくて、先に苦しみ抜いて死ぬのは1番弱い者たちであり、何よりも「絶望に浸るのもわかるけど自分の愛する大切な他者がより良い未来を生きていくために現在の我々が可能な範囲で踏ん張らないとね」というアンサーがあって感動しました。
国産のコンテンツには苦い記憶ばかりでほぼ期待していなかったため、このような成熟したテーマの作品に出会えて心の底からめちゃくちゃ嬉しかったです。
そしてゲゲ郎の選択した終盤の行動、ひいてはこの作品における「絶望する苦しみに寄り添いつつもそこで壊れてしまうのではなく他者の幸福のために大人としての責任を果たしより良い未来を作る」は岩子の無償の愛からもたらされたので、もしかしたら世界は愛でも回ってるのかもしれないなと思いました。

ひとつだけ心残りなのは、時ちゃんと沙代さんが最期まで報われなかったことです。
彼らは何も悪事に手を染めていないので、少しだけ救いはありましたが、無惨に全てを踏み躙られた彼らに安らぎが訪れることを願ってやみません。
ナラトモ

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