このレビューはネタバレを含みます
【あまりにも愛の物語】
鬼太郎についてはメインキャラの名前がわかる、墓場で生まれたことは知っている、境港の記念館には遊びに行ったことがある程度の知識で鑑賞。十分楽しめた。
因習村ミステリーと妖怪の組み合わせが良き…！
と言いつつ、暗い話とグロ、ホラーは苦手なんだけどもこの作品はギリいけました！！
水木とゲゲ郎のティザービジュアル（血まみれの墓石の前で立ってる2人のやつ）が出た時にこりゃまた刺さるキャラデザと世界観…と思い、観たい映画リストには入っていたけれどなかなか時間が取れず、年が明けての鑑賞に。ヒットのおかげでこのタイミングでも観やすい時間の上映があって感謝🙏
水木がとんでもなく魅力的な男だったな……成り上がりたい動機が自分の無力さとか、悔しさ惨めさからきてる人間味の強いやつで、自分が生きることだけに必死だった彼が、幸せになって欲しいなと思わずにはいられない。そんな水木が一途な愛を持つゲゲ郎と共にいることで、他人を守りたいと思うようになっていくのが良い。
◼︎好きなシーンなど
個人的に一番良かったのは、水木が戦地を振り返って語るシーン。（墓場でゲゲ郎と酒を飲み交わしてるところだったかな？）声のリアルさに感情揺さぶられた。今まで自分の中で声優さんとキャラクターを切り離している感覚はなかったんだけど、初めてその境目がわからなくなる感覚だった。声優さんは水木ではないから、もちろん彼と同じ経験をしたわけじゃないんだけど、このシーンに関しては本当に戦地を経験してきた男が、苦しい過去を振り返る声をしていた…。
あと、山田記者が鬼太郎の跡をつけるときもだけど、水木が昼間に訪れたときも哭倉村の不気味な描写がうますぎて、ずっと何だか気持ち悪いな…の感覚が抜けなかった。YouTubeで廃村を訪れる動画をたまに見るんだけど、その時に感じる物悲しさというか、時の止まった場所への違和感がアニメーションから感じられて凄っ…と思った。
さらにエンドロールも涙無しでは観られらない……泣いてて頭あんまり働いてなかったからエンドロールもっかいちゃんと見たい。
◼︎目
「世の中は片目で見るくらいが丁度いいんじゃ」
ゲゲ郎のこのセリフと、幽霊族の3人は片目が見えない（ゲゲ郎は左、鬼太郎も左、再会したゲゲ郎の妻は右）、殺される龍賀の3人は片目（左）なくなるし、水木の左目には傷がある。
目がポイントなんだろうなと思うと、何の意味が込められているのかな…とちょっと考えた。
自分が知ってる中で目に関わる左右で言えば、人は過去のとこを思い出しながら話すとき時は左、嘘を付くときは右（ないことを想像する＝これから先の新たなイメージ）を見るって聞いたことがあって、その理論でいけば左目は過去、右目は未来と比喩的に表現できる。
鬼太郎はもとよりのキャラクターデザインであのビジュアルだとして、今回の映画にあたって生まれた水木というキャラクターの左目の傷は、過去の事柄に用傷と例えることができるし（事実戦争の傷なんだけども）、それが戦争で負った身体・心理的な傷と言える。けど水木の左目は他の目に特徴のあるキャラクターたちとは違ってちゃんと見えていて、過去から目を背けない、それを背負って生きているって意味なのかもしれない。
龍賀の人たちは、過去＝しきたりから逃れたい、悍ましい過去を消し去りたい沙代が呪い殺したから、過去を意味する左目を皆失ったということかな？
ゲゲ郎は鬼太郎とデザインを似せたという話を聞いた気がするので深い意味はないのかもしれないけど、愛する妻が人間を愛する心に触れて、人間を恨んでいた過去（左目）は隠して生きているという意味に取れなくもない。
桜の下で再会した時のゲゲ郎の妻の右目が見えないのはわかりやすいが、再会後彼女に未来がない＝死が近いという意味として受け取れた。
◼︎リアリティ
村で出された夕食をかき込む、水木の食い意地（？）が張っているところ戦争帰りで裕福でない感じが感じ取れてリアルでよかった…ふと戦争体験したじいちゃんが、一緒に食事をするたびに好きなものを後から食べる私を見て好きなものを先に食べないと何かが起こったら食べられなくなるぞと毎回言うのを思い出した…
◼︎ゾーニング
PG12だったけど、所々の絵面のグロさはさることながら、因習村の風習の方がなかなか子どもには…って感じだったな。自分が子どもを持った時にこれをどう助言して見せればいいのだろうかって少し考えちゃったな。
一度自分だけで見て精査しないと、どう助言が必要かもわかんないな。と毎度この指定のある作品を見ては思うのであった…
◼︎セリフ
「何も思い出せない なのになぜこんな 悲しいんだ」ラストの水木ののセリフで我慢してた涙がこぼれてしまった。悲しいよ……😭😭
「この社会は今も貧しい」
ゲゲ郎のセリフ刺さった…そうなんだよな…表面上普通に暮らせてても、決して胸を張って豊かだとは言い切れないんだよな…お金もそうなんだけど、心の貧しさもある…
