町尾

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎の町尾のレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.3
えらく評判がいいので見てみたら、これはなんという昭和。戦中、戦後の日本の暗部を鍋に全部ぶち込んで煮込んだような、子供向けな部分はほぼ皆無な内容。とりあえずモロに「犬神家の一族」とか「八つ墓村」的な昭和田舎怪奇ミステリな外観な訳で、あとは京極堂シリーズっぽい戦後すぐの雰囲気というか、それにしてもどんなけ吸うねんってくらいずっとタバコ吸うてる。基本的内容も大体横溝正史とかっぽい感じの出来事が起こる。まぁ大体見覚えのある展開の詰め合わせ、欲張りセット感はなくもないが、因習の残る村、そこに君臨する一族、遺産跡目争い、東京に連れてって欲しい美少女、そしてグロい怪死事件。この辺の死に方とかが最高で、こんなメジャーなアニメでこれやってくるのは有り難い。終盤の村が地獄絵図になるのとかもいい。まぁこんな基本要素だけで大好物でした。
そんでそこにゲゲゲの鬼太郎的な妖怪要素を混ぜ込んで後半はどんどん盛り上がる。後の目玉のオヤジことゲゲ郎さん、戦ったらゴリッゴリに強い。この感じスターウォーズのEP2でヨーダがめっちゃ強かった時のような感動があった。
主人公水木さんも声を含めてカッコええのでこれは流行りますわ。そんで水木しげる先生の実体験でもある南方に戦争行って死にかけた件も絡めて現実と虚構が絶妙に混じり合う。結局この国は戦時中、戦後の復興期から現代までずっと一部の偉い人らの為に大多数の弱者達が犠牲になり続けてるってのをえげつなく見せつけてきてキツい。忘れねぇよトキちゃん、忘れない為にこれもう毎年8月に「この世界の片隅に」と一緒に放送すべきよ。そしてクライマックスからのエンディングでタイトルにある鬼太郎誕生に至る顛末、つまりは水木しげるが墓場の鬼太郎を生み出すに至ったような感じで終わるのは見事な構成としか言いようがない。
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