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そして僕は途方に暮れるのハルのレビュー・感想・評価

そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)
3.8
浮気がバレた彼女から逃げ、友達から逃げ、先輩から逃げ、後輩には見栄をはり、家族相手に逆ギレする男の話。
主人公は日本ワーストクラスのダメ男なんだけど、その父ちゃんはワールドクラスのダメ男だったというのが痛快。
父ちゃんは離婚→再婚からの浮気バレ離婚の末に慰謝料請求で借金まみれ→携帯止めて身元探れないように工作後引っ越し。
最早、クズ男界のバロンドーラー。

日本最低とクズバロンドーラーが一緒に生活するシーンなんかはもう本当に言葉の出ない酷さで笑えた。
半分くらい何を言ってるかわからないんだけど、そういえば都合のいい人って屁理屈こねたりやたら喋る人が多いよなぁと納得の描写。
クズ男「俺はあんたと生活して心底あんたみたくはなりたくないと思ったよ!」
バロンドーラー「お前には言われたくねーよ!!」
僕を含めた観客一同「両方なりたくね~わ…」
藤ヶ谷太輔と豊川悦司の空気感がアンニョイ過ぎる。

でも何かさ、それでもこの二人を見捨てきれない人たちが周りにいるから不思議と温かいんだ。
「俺の母さんが病気になって、みんな来てくれたからこれまでの行為をウヤムヤにできそうだなぁとか常に邪な事を考えてしまう…」
このセリフからもわかる通り、主人公は生粋の逃げ根性、性根が腐ってるタイプなんだけど、ちょっぴり気持ちもわかったり。
逃げたくてしょうがないときは、自分でも本当の気持ちがどこにあるか分からなくなるじゃん?
ま、とはいっても色々怖くなって普通はここまでにはならないんだけど(笑)
こんなにも全てから逃げ切れるのは特殊な才能に思えた。

あ、でも里美(前田敦子)のは浮気じゃないよね?
里美は謝ってたけど話し合いせずに彼女の元から逃げた時点で別れたと思われても仕方ないし、普通に良い人がいたらそっち行くよ。
彼氏の親友と出来ちゃったとはいっても彼氏がいきなり消えたんだから、相談しているうちに仲良くなってヤッちゃって付き合うなんてよくある話。
祐一は里美をしっかり責め、流石のクズぶりを発揮。
こいつにはブレない強さがある。

この物語、元々は舞台の話ということで丁々発止のテンポ感勝負の作品。
ちょっと同じ展開が多すぎてマンネリ感は出ていたけど十分面白かったな。
ラストカットのあと、祐一はまたしても逃げるだろう。
そして、ピンチになったら親父譲りの魔法の言葉をいうんだ「面白くなってきやがったぜ!」ってね。
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