ハル

ミッシングのハルのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.1
ティーチ・イン付き試写会にて。
『空白』『BLUE』『神は見返りを求める』など、昨今際立つ良作を繰り出している吉田恵輔監督の最新作。

予告映像を見ても分かる通り、娘がいなくなってしまった母親の喪失と狂おしさを恐ろしいほど繊細に石原さとみが演じている。
圧巻、そんな言葉では言い表せないほど身体全体、心のすべてを使い、母親の気持ちを体現していた。
序盤から憑依したかのような様相で演じる彼女だが、中盤に直視できないほど辛いシーンもあり、自然と涙が出てきてしまう。
く、くるしい…

また、その母親を取材し、ドキュメンタリーとして放送するテレビ局の職員を中村倫也が名演。
もうひとりの主人公と評していいほど、素晴らしい存在感を示していたように思う。
真摯に、誠実に仕事に取り組む姿。
不運に見舞われた家族に寄り添い、一方で、被害者を傷つけながら撮影を続けることへの葛藤に苛まれる男。
感情の板挟みで答えが出ず、焦燥していく彼を見ていると、真実を映す必要性への疑問が浮かびあがる。
そして、胸が締め付けられていった。
中村倫也ってここまで凄い役者になっていたのか…そう感じさせる渾身のお芝居。
役者として需要が絶えないワケだ。

決して楽しい作品ではない。
しかし、監督、役者陣の確かな強き想いを感じ取れる物語。
監督曰く『空白』の姉妹的な位置づけで制作したとの事だが、ロケ地然り、設定然り、重なる部分が多くあったのでそれも納得。
事件後の被害者家族につき、深く深く考えさせられる映画でした。
『空白』に心を動かされた方には特におすすめしたく思います。
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