MasaichiYaguchi

戦火のナージャのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

戦火のナージャ(2010年製作の映画)
3.4
前作のスターリン大粛清を描いた「太陽に灼かれて」から十数年の時を経て登場した続編で、第二次世界大戦の独ソ戦を壮大なスケールで描いている。
ストーリーは、大粛清で家族がバラバラになってしまったコトフ元大佐と、その娘ナージャの二人を軸に展開していく。
収容所に入れられていたコトフは、独ソ開戦の混乱に紛れて脱走、その後、各地を懲罰部隊の一兵卒として転戦していく。
その娘ナージャは少年少女団員として赤十字船で疎開する矢先、独軍の攻撃を受けて沈没、九死に一生を得るものの、流浪の身となる。
映画の戦闘シーンはド迫力で、その場にいる様な臨場感があり、近年の戦争映画、スティーブン・スピルバーグの「プライベート・ライアン」、リドリー・スコットの「ブラックホーク・ダウン」、クリント・イーストウッドの「硫黄島からの手紙」等の戦闘場面を凌ぐ迫力だ!
更に過去の映画以上に本作は戦争の悲惨さや愚かさを、目を背けたくなるほど我々に突き付けていく。
絶望の淵に立った様な救いようの無い展開に、ニキータ・ミハルコフ監督は我々に一条の光を投げ掛ける。
それは「神」、又は「神的存在」と言い直しても良い。
圧倒的な戦力を持つ独軍との戦いの前、ムスリムに祈りを捧げる兵士。
独軍の攻撃で船が沈没し、機雷に捉まり海を漂うなか、ナージャに洗礼を行い、海に没していくロシア正教会司祭。
そして二時間半の地獄絵図の果て、ラストシーンの余りの神々しさに息を呑む。
ニキータ・ミハルコフ監督のこの三部作を通しで観たら丸一日費やしそうだが、完結編もいつか観てみたい。