Marian

ノーカントリーのMarianのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.2
名作『There Will Be Blood』をおさえてアカデミー作品賞を受賞したことで知られている本作。
非常に複雑な味わいを持った作品だった。
まず触れなければならないのは、本作のメイン・ヴィラン、アントン・シガーであろう。さすがに気持ち悪すぎた。彼のキャラクター作りは本当に秀逸。自らのルールのもと、淡々と人を殺していく超サイコキラー。作中でもほとんど弱みを見せず、文字通り"死神"として次々と人を殺していくのだが、自分のルールが上手くいかない時だけほんの少し動揺を見せるのが余計にサイコ味があって気持ち悪かった。アントン・シガーを演じたハビエル・バルデムの演技は素晴らしく、彼がパイレーツ5作目でメイン・ヴィランにキャスティングされる理由がよくわかる。作中ずっと目がイってて、やばすぎた。あと、他にもトミー・リー・ジョーンズ、ウディ・ハレルソン等、いちいち超大物俳優が登場してきてはこれでもかと言わんばかりの名演技を披露していて、鑑賞後の満足度は高い。
アントン・シガーという強烈な悪役を抱えていながらも、本作の味わいはどちらかといえば哀愁を感じるものになっているのも興味深かった。タイトルの通り、「この国に老人たちの居場所はない」という年老いた世代の憂国の感情が詰まっており、それがテキサスの荒涼とした雰囲気と見事な化学反応を起こしていて、素晴らしかった。良作。
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