モモモ

ライダーズ・オブ・ジャスティスのモモモのレビュー・感想・評価

4.4
いやいやまさか今年ベスト級にもう出逢ってしまうなんて…。
去年の「アナザーラウンド」でベスト・マッツを更新したばかりなのに!
更なるベスト・マッツが現れるなんて!!!
心に傷を負った男達の「再生」と「破壊」を真正面からシリアスに、不謹慎な笑いを添えながら描く傑作バイオレンス・ブロマンス・セラピー映画。
列車事故で妻を失ったマッツと娘。
同じ車両に「偶然」乗り合わせた男とその仲間達。
男達が唱える「偶然など存在しない」と言う仮説から始まる復讐劇。
「偶然」と言うテーマが本作を唯一無二の映画へと昇華し、物語を推進し、キャラクターの因果と苦悩が絡み合い、収束し、解放されていく。
「青い自転車」を欲しがる少女。
その為に盗まれた「青い自転車」。
自転車を無くした娘を車で送迎する母親。
そこに届く夫からの落ち込む連絡。
全ては「偶然」ではない。
全ては因果で、全ての事象には理由がある…と見せかけて、本作は最後の最後にちゃぶ台を返す。
マッツ演じる主人公の心情を、見守る観客達の願いを逆手に取った見事なちゃぶ台返し。
苦しみからの解放は、喪失の受容は、暴力と報復の先にはない。
弱さを認め、助けを乞い、手を取り合い、他者と繋がったその先に未来があるのだ。
不条理で不謹慎な笑いの中で「追い回されて尻を差し出す男」の姿から「死体を憎しみを込めて蹴る男」の姿から、その苦しみと、心の病理と、過去のトラウマを垣間見る事が出来る。
多くを語る事はないが、確かな視点で、誠実にキャラクターに寄り添い、「有害な男らしさ」からの脱却を描くセラピー映画の大傑作。
欲を言うならばクリスマスに観たかったです。
モモモ

モモモ