キツネとタユタム

ライダーズ・オブ・ジャスティスのキツネとタユタムのレビュー・感想・評価

4.8
妻が列車事故で亡くなったという知らせを受けた軍人が、その事故が殺人事件に巻き込まれて起きたものと聞き、仕組んだ者たちへ復讐していくお話。

最近デンマーク映画との肌感が合うのに気付き密かに高揚感を隠せない。
観た映画は少ないが、人間賛歌であったり、不幸な出来事に対する折り合いのつけ方など、「答えの無いテーマ」を扱っていることが多く感じる。
そんな映画の最たるものがこの「ライダーズ・オブ・ジャスティス」だったように思う。

受け入れ難い悲劇に見舞われたとき、人は原因を求めたがる。
しかし、いくら原因を遡っても、起きてしまった事実は、無数の偶然がぶつかり合い導かれた結果に過ぎず、追い求めても欲しい答えは見つからない。
だから人は折り合いをつけて生きねばならない。

自分の周りで理不尽な悲劇が起きてしまったとき、そんな大人の対応が出来るのかと思うと自信は全くない。
でも、過ぎ去った過去に原因を求め、たとえ自分なりの答えが見つかったとしても、心に渦巻く整理しきれない気持ちが整理できるとも思えない。
だから、どんなにつらくても前を向いて生きていかなければいけないんだと思う。
そしてその道は決して一人では無く、仲間がいることを、この映画は教えてくれる。

そんな、重いテーマを扱っているのに、表面上の枠組みが「強いおっさんの復讐劇」として描かれているのも何とも凄みを感じる。
頬が緩むレベルのコメディ要素も含め、人生の糧として心に留めて置きたい映画に思う。

マッツ・ミケルセンは流石の存在感。
哀愁という言葉が良く似合う。今回は髭坊主なので、いつものダンディな雰囲気は無いのだが、うちに秘める悲しみや怒りが画面から伝わってる演技は圧巻で、世界に引き込んでくれる。
そしてラース・ブリグマン。デンマークの俳優で、こちらで名前を見ることはほぼ無いのだが、何だか忘れられない演技をしてくれる。
本作の物語を高める役をかなり担っていたと思う。


こういった生き方のヒントをくれる映画はとても良いと思う。
というより、こういう映画に出会うために映画を観続けてるのかもしれない。
キツネとタユタム

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