くりふ

ブラフマーストラのくりふのレビュー・感想・評価

ブラフマーストラ(2022年製作の映画)
3.5
【炎に包んで愛に丸投げ】

美の担保兼ねる、アーリヤーちゃん目当てで劇場へ。中身は多分、MCUに追いつけぬ息切れ感で脱力か?と期待値サゲて臨んだのがよかったか…最後まで息切れはしなかった!

インド映画あるある力技で、心地よくさせられたコトが大きいけれど。もちろん、まず偉大なるはアーリヤー力。『RRR』での不足感を上書きする出ずっぱりで、堪能しました!

彼女、当たり前だけど、顔が変わってきたね。個人的には、小動物顔にジュリエット・ビノシュの円味が乗って来た感。でも可愛らしさ続行、妙な大女優感がないところがいいです。

神サマ関連話だが、主人公にとって真の女神は彼女…ていう落とし処も、あるあるだが善き哉。しかし一般人なのに、超パワー持たぬ超ヒロインみたいな活躍をしているね。そこまでの経緯をショートカットしているから、ちょっと“おかしな子”に見える気も。

脚本は、後から詰めりゃいい!と粗筋段階で撮り始めたものの、雑なまま撮了!みたいな。

人物の行動が、時に笑うほど行きあたりバターリ多し。“プロ”である筈の、ブラフマーンシュの皆さんからして、何だか無策で死に急ぐ。インドらしいなあ、とも思ったけれど。

で、展開に行き詰まったらラブラブ撮っとけ!が現場の合い言葉だったのでは?

撮影時は結婚直前だったランビール・カプールとアーリヤー・バット。確かにラブラブいい味だし、ランビールの眼差しは本物くさい。でもさあ、ラブラブたくさん撮ったから、物語のオチもラブラブでまとめちゃえ!てのはあまりにランボーではないかい?

いくら愛が万能と叫んでも、愛の火は必ず消えるのだから、それを“要石”にしちゃダメでしょ!

インドで当たったワケはアチコチに感じるし、パワーが漲っているのは確か。でも、雑。『バーフバリ』や『RRR』が、アホっぽく見せているが実は緻密ってコトを、ボリウッドは学ばなかったのだろうか?

全ての基となる超パワーを抽象的にして、ヒンドゥー由来を避けたのはよかったね。とはいえ、どうしたってヒンドゥープロモな見せ方になってるが。その悪影響に触れないのはしょせん娯楽映画か。インド現地で騒いでいるというヒンドゥー至上主義者に忖度したものか。

破壊神シヴァを拝んでいたオウムがかつて、実際に破壊行動を起こしてしまったことは、日本人は自分ごととして、忘れてはいけないでしょう。

シャールクやアミターブはさすがの貫禄で画面を拐う一方、ナンデこの人出てるの?と感じるオーラ抜きで撮られる方は、ボリウッド以外のスターらしい。そういうトコも雑ではと。

最もビミョーと思ったのは主役のランビール。映画の幹なのに心身とも脆弱に映る。DJシステムは扱えても、火は無理っぽい。鬼殺隊で火の呼吸を習ってから出るべきでした。

三部作の第一部だってこと、キチンと宣伝されていないと思うのだが、いったんキチンと完結している点は礼儀正しいね。正直、物語的にはこの先、見たいとは思えないけれど。

日本では『RRR』のようには当たらぬかと。長い割には、あのオモレエェ!と熱狂できる密度はありません。でもこれはこれで、ハマれば楽しきインド味、あることは確かですね。

<2023.5.13記>
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